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【メルゼブルク大戦㉗~海賊の石~】

「お父さんも莉奈もいなくてちょっと寂しけど…、今日は3人で遊びに行きましょう。2人とも川遊び初めてよね?」母は幼い私と凱に話しかける。


「うん!」

「はい!」初めての川遊びに目をキラキラさせて答える私たちに、


「楽しみましょうね。でもね、川は私たちの生活に必要な水を運んでくれるけど、その力は私たちの命を奪うこともあるの。だからお母さんの傍を離れちゃだめよ。分かった?」若き日の母、莉月が優しく説く。


「はい。」凱は大きく頷く。


「うん。凱と一緒にお母さんのそばにいるね。」私も嬉しそうに話している。


それは幼き日の出来事。凱が私のバートラルと分かった日の記憶だった。


「凱、見て!ここにカニがいる。可愛い!」


「え?どこに?あっ、ほんとだ!赤ちゃんガニかな?すごく小さい。」


「ねえお母さん、私このカニさん、飼いたい!」私は母の顔を見る。母はそんな私に、


「莉羽、このカニさんはここで生まれて、ここで育ってきたの。お家に持って帰ったら、この川とはお水も違うし、ご飯も違うでしょ?お母さんは、このカニさんをおうちに連れて行ったら…、きっとすぐに天国に行ってしまうと思うの。莉羽はどう思う?」そう言って考えさせる。


 私は母の言葉にしばらく考えて、


「私もカニさん、天国に行っちゃうと思う。だから飼いたいけどやめるね。ずっと、ずっと元気でいてほしいから…。


 じゃあ、またね。カニさん。来年もここに来るから元気でいてね!」そう言ってカニを川に返す私。


それを見た母は、


「莉羽、カニさんもきっと喜んでると思うわ。来年もまたみんなで来ましょうね。」


そう言ってニコッと笑う。


 私は母の笑顔が大好きだった。母の笑顔はいつも人の心を和ませ、幸せな気持ちにする力があった。今、思うと、それが神遣士である母の力の1つだったのかもしれない。私はそんな母を見て、自分も人を笑顔にさせる、そんな人になりたいと思っていた。

 そのせいか、自分で言うのもなんだが…、昔から私の周りはいつも笑い声が絶えず、笑顔で溢れていた。兎にも角にも、私は少なからず、母の神遣士の資質を受け継いでいたのだと、今になって気づかされる。


 川は穏やかに流れている。キラキラと陽の光が反射する水面の美しさに目を魅かれつつ、川に戻したカニの様子が気になり川底を見つめる私は光るものを見つける。


「ねえ、凱?これ何?」


 私はカニの近くにある直径3センチほどの石を拾って凱に見せる。凱はその石を受け取り、


「これは、何でもない石の中に宝石が隠された石だ!きっと海賊がこの石の中に宝石を隠したんだぞ!」


それはどこにでもあるような石の中に、真っ青な石が埋め込まれたような珍しい石だった。それを手に、凱は無邪気な笑顔をたたえながら話す。そんな凱の冗談を私は本気に受け取り、


「え?海賊が?すごい!すごい石見つけちゃった!ねえ、お母さん。見て!海賊の宝石!」私が凱の手の石を受け取ろうと石に触れる。


すると、突如耳を劈くような雷鳴が轟き、辺りを黒雲が覆い始める。



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