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【メルゼブルク大戦㉑~狂乱の莉奈~】

 その姿、その目は先ほどのクラウディス同様、何者かに取り憑かれたと思わんばかりの変貌ぶりだった。それが莉奈であることは、声で認識できたようなもので、もし声を聞かなったら誰だか分からなかっただろう。それほどの変貌ぶりだった。


「涙、涙の姉弟の再会。美しい!まさに愛。素晴らしいじゃない!」そう言って手を叩き、不気味な笑みをたたえる。そして、


「だが、あの日、あなたたちが引き裂かれることがなかったら、2人にこれだけの深い愛情は生まれたのかしら?引き裂かれたことで生まれた感情だからこそ、ここまで大きくなった。

 つまりは、あの日、姉が連れ去られることが無かったら、ここまでの強い愛情をお互い持つことはなかったってことね。そして、その愛が永遠のものである保証はない。


姉妹、兄弟、家族、血が濃い程、関係が近い程、愛情は深くもなるけれど…、一方で負の感情も生まれやすい…。一度その関係にひびが入れば、何と脆いものか…。結びつきが強い程、憎しみや妬みは大きくなる…。例えば…、姉妹、兄弟間なんかは特に…、容姿、能力、財力とかかしらね。どちらの方が綺麗、頭が良い、お金持ち…みたいな?ところで、いとも簡単に妬み、嫉み、憎しみは生まれるわ。まあ、経験した者にしか分からないものだけど…。


 私は莉羽に全てを奪われてきたの。何もかも…。私は何一つ悪くないのに…。あの子は善人面して…。周りからの愛情もたくさん受けて、伸び伸びと育っていった。私には経験できないものをすべて経験して…だからこそ私は妹である莉羽が憎い。その思いが単なる他人に持つ感情とは比にならないってことは、それを経験した私だからこそ…、分かる事。


 あなたもきっとそうよ。お姉さんに裏切られてみるといいわ。そうすれば私の言っている事がぜーんぶ分かるから。


私はね、本来私のものだったはずのものを、今こそ全部取り返すつもりなの。あの子への憎悪が日に日に増していく自分に、最近では美しささえ感じる。私は何一つ悪くない。私こそが正義なのだと。


 だから凱も、この世も全て私が手に入れる。それの何が悪いの?


否定できないわよね? 

可哀そうね…。こうやって、何も知らないまま死んでいくなんて。

あなたたちの運命、一緒に嘆いてあげましょうか?ふふふ。

まあせいぜい、今この瞬間の幸せを…十分に楽しむがいいわ。」莉奈の言葉の真意が全く分からないハルトムートは、


「お前は、さっき連れていかれた死にぞこないの莉羽の姉って奴か?そんな弱者が何を喚いているのかと思えば…。

 莉羽と姉妹なんて、まったくもって信じられない話だ。人に対する愛情を尽くして止まない莉羽と…、人の不幸しか考えられないようなお前が同じ家族、姉妹だなんて…。魂の質の違い…か。


 そしてお前の話は…、真に愛されたことのない者が言う戯言だ。愛や真心を否定する輩は昨今、だいたい同じ事を言う。愛されないのは全て周りのせい。自分は悪くない。そう言って自分を正当化することで自我を保つ…。


 それこそ人として残念な生き方だな。お前こそ、心から可愛そうなやつだ。」その言葉に莉奈の表情が微妙に歪む。それに気づいたハルトムートが、


「ん?やはり、図星か?お前…、妹ばっかり愛されてとか、自分が愛されないのは妹のせいだとか?全部莉羽のせいにして生きてきたんだな?ふっ…子供だな。そんなくだらん奴にアレクシアは渡せない。アレクをどこにやった?正直に話せ。」そのハルトムートの言葉に完全に理性を失った莉奈は、


「さっきから黙って聞いていれば…、黙りなさい!人の心を…さも分かったかのように…。


 絶対に許さない。感動の再会を果たした後でしょうけど…、あなたがアレクシアと会うことは、もう2度とないわ。覚悟しなさい。」


 そう言った瞬間、莉奈は目を閉じ、自らを灰色のオーラの球体に閉じ込め、そこで祈り始める。その間、仲間たちがその球体に向けて様々な攻撃を繰り出すも、全て跳ね返されてしまう。


「今までとは比べ物にならないほどの邪悪なオーラを感じる。俺たちの力を結集しても…、太刀打ちできない…。」マグヌスが莉奈を取り巻くオーラが徐々に大きくなっていくのを絶望の目で見ている。


「あんな強大な憎悪の塊は見たことがない。もう私たちにできることはない…。」アガーテが剣を下す。


「そんな…。それじゃ、もう私たち、ここで死んじゃうの?ねえ、アーロ。」リディアは今にも泣きそうな顔でアーロを問い詰める。


「…。」アーロはリディアに返せる言葉を探すも、目の前で起きている恐怖に何も言えずにいる。


誰もが莉奈の次なる攻撃に「終わり」を感じたその時…

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