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【メルゼブルク大戦⑳~姉弟再会~】

 私たちのすぐ隣の戦場では、ある日突然奪われた、愛する姉を取り戻さんとする弟の戦いが始まろうとしていた。ハルトムートの姉アレクシアが空より舞い降り、王宮の塔の通路に立つハルトムートがその姿をじっと見つめている。


「アレクシア…。」


 ハルトムートは、自分の姉アレクシアが敵の手中に落ちたとの話を聞いてから、ずっと疑心暗鬼であった。しかし、天空から舞い降りるその女性は、まさに美の化身のような自分の姉、その人で、ようやく会えたその喜び反面、敵の主軸の1人となっている事に複雑な心境を抱える彼の目は、悲しみの色も見え隠れしている。


 ハルトムートはにわかに信じられないという表情で、その姿をそらすことなく見つめる。アレクシアはハルトの目線まで下りてくると、片手で何かの合図を送る。するとどこからともなく、魔物の集団が現れ、一斉にハルトに猛攻を仕掛けてくる。


 しかし、長年探し続けてきたアレクシアの存在を確認したハルトムートには、怖いものなどなかった。魔物を全て撃破し、アレクシアに向かう。


「アレクシア。俺だ。ハルトムートだ。目覚めてくれ。」ハルトムートは声の限り叫びながら走る。


 アレクシアのもとに今まさにたどり着く寸前のハルトムートに、塔の陰から見ていたヴァランティーヌが奇襲をかける。すると、その衝撃で王宮の西塔から北塔に続く通路が崩落し始め、その通路にいたハルトムートの体が50mほどの高さから、地上めがけて真っ逆さまに落ちていく。仲間がそれを視認したのは地面まであと5mほどの高さの所で、魔物を相手に戦う者たちにはすでに何の手立てもなかった。誰もがハルトムートの死を覚悟したとき、


「ハルトムート!」戦場に響き渡るような大きな声が聞こえ、ハルトムートの体が地上1mの高さで止ままる。


「なん…だ?」ハルトムート自身、何が起きたのか分からず、宙に浮いたまま周りをきょろきょろ見回す。


「ハルトさん!大丈夫ですか?」そう言って、アーロがハルトムートのもとに駆け寄る。


「ああ、アーロ?なんだか助かったみたいだ。君が助けてくれたのか?」ハルトムートが尋ねるとアーロは首を横に振る。そしてゆっくりとその声の主の方を指さす。ハルトムートはゆっくり地面に足を伸ばし、アーロの指さす方を見る。するとそこには、


「ハルトムート!」弟の無事を喜び、涙を流し、その名を呼ぶ姉アレクシアの姿があった。


「アレクシア?」ハルトムートの顔は、信じられないという表情から喜びの表情へと変わっていく。


「アレクシア!」もう一度その名を呼び、姉に向かって一歩ずつ歩を進める。近づくにつれ、長年の思いで胸に熱いものがこみ上げ、目には涙が浮かんでくる。


「あの日から、ずっと…、ずっと探してきたんだ。絶対に何がなんでも取り戻すって…、生きていることだけを信じて…。探してきたんだ。ああ…、アレクシア。」アレクシアまであと3mの距離。


 今にも抱きしめたい気持ちを押さえつつ歩み寄るハルトムートの前に突如、漆黒の旋風が巻き起こる。


「なっ、なんだ?」ハルトムートは旋風の渦の中でアレクシアを探そうとするも、目が粉塵でふさがれ目を開けることが出来ない。


「アレクシア!」大声で呼ぶ。しかし、返事はない。その代わりに聞こえてきたのは、


「ここで大事な12支人を失うわけにはいかない。さっさと死ね。」


黒い人影に連れていかれ、姿を消したはずの莉奈の声であった。そして、旋風が収まると同時に姿を現す。


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