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【メルゼブルク大戦⑯~再びの洗脳~】

「莉奈?」私はまさかと目を見張る。


「なぜ?」凱も驚きを隠せない。


「なぜも何もないわよ。あんな攻撃ちょろいって言うの。あなた達、私の力を過小評価しすぎよ。私は誰よりも強いの。」そう言って高らかに笑う莉奈の姿に、私は絶望を感じうつむく。


「さ~て、凱にはもう一度ふか~い眠りについてもらおうかしら。」莉奈は楽しそうに呟き始める。


「え?何をするっていうの?まさか…。」私は最悪な事態を想像する間もなく、


「凱、逃げて!」そう叫んでいた。同じことを予想していた凱は、すでに洗脳からの防御の神術を自分にかけ始めていたが、時すでに遅し…。


 凱は光を失った瞳に再び戻り、操られるようにして莉奈の足元に跪く。莉奈はその凱の手に接吻し、私を見てにやりとほほ笑む。


「あなたの大事な凱君は、また私のもとに帰ってきたわ。そして2回目の洗脳って…、無知な莉羽ちゃんは知ってるかしら?いや、知らないわよね~。

 1回目よりもさらに強くて逃れる事が99%無理って。ふふふふふ。無知な莉羽ちゃんったら、本当に可哀そうに。」


莉奈はそう言いながら凱に抱きつき、私を見て再び高らかに笑う。


「凱…。」私は無意識に声を漏らす。


「残念だけど、莉羽。私の勝ちね。もうつまらない油断はしない。ここで終わらせる。」莉奈はそう言って、私に向けて呪文を唱え始める。


 私は焦りつつ後退し、息を吐きながら『宿世石』を剣にはめ込み、前方にいる莉奈を睨みつけ、莉奈が呪文を唱え切る前に切り込んでいく。莉奈も魔法によって作りだした剣で私の攻撃をかわしつつ、片方の短剣で私の腕に切りつける。莉奈と激しく剣を交えながら、私は同時に呪文を唱え魔法を繰り出し、すかさず術に切り替えての3弾攻撃で、少しずつ莉奈を追い詰めていく。

 

 しかし、莉奈の方も自ら生み出した魔物の援護を受け、攻撃を止めることはない。先ほど莉奈の奇襲により受けた私のお腹の傷口は、激しい攻防と共に開いていく。と同時に、私の攻撃も莉奈にかなりのダメージを与えているのが、ふらつきながら歩く莉奈の様子から見て取れる。


 一体どれくらいの時間、やり合っているのだろうか…。私は大量の出血から意識が遠のいてくのを感じつつ、自分に残された時間がわずかであることを嘆く。私も莉奈も時間が経つにつれ、体中の殺傷が自らの体に想像以上のダメージを与えているのを自覚する。


『もう時間がない…。体が悲鳴を上げている…』


 呼吸も乱れ、体力の限界も近づいている中で、私は莉奈の体を羽交い絞めにし、首に剣を突きさそうとする。すると、先ほどまでコンラードと戦っていたはずのセージガルドが意表をついて何千という数の矢を私めがけて放ってきた。

 しかし、私は莉奈と交戦しながらも、ちょっとした視線の変化でセージガルドの動きに気づいてはいた。だが、そんな私の上を行くものがいた。


 まさかのクラウディスだった。


 彼は、セージガルドが矢を放ったことに気づいた私の気の焦りを察し、すぐさま私に静止魔法をかけ、矢を避けられないように計ったのだった。矢が頭上5mのあたりに近づいてきたところで、私は肉体離脱の魔法をかけようとするも、クラウディスの静止魔法により口も動かせない。為す術が無くなった私は、矢の攻撃を甘んじて受ける覚悟をする。何本もの矢が地面に突き刺さる音があたりに響き、私は死を覚悟した。


 そんな中、私は自分の目の前で、何かが地面に倒れこんでいくのを確認する。そして、次の瞬間クラウディスの魔法が解けたのか体が自由になり、その倒れこんだ者を確認する。


 そこに横たわっていたのは、何十本もの矢が体中に突き刺さった莉奈の姿だった。


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