【メルゼブルク大戦⑮~奇跡~】
私は目を開け、両手を広げ、私と共に戦う全ての者の心に『祈り』の光を照らす。
すると曇天の空が真っ二つに割れ、そこから太陽の光のような、まばゆいばかりの『祈り』の光が注ぎ、仲間たちを照らしていく。その光を浴びた者は、己の潜在能力が少しずつ解放されていくのを自ら感覚で感じ取り、そして負った傷をも回復させていく。
気づくと、瀕死もしくはすでに命を落としていたはずの全ての兵士たちが、まるでそれがなかった事のように、力強く次々と立ち上がり、その奇跡のような出来事に至る所で歓声を上げ始める。
「傷が治っている!」
「おい、お前…、生き返ったのか?」
「そういうお前も、今にも死にそうだったじゃないか!」
「奇跡だ!」
「奇跡が起きたぞ!」
兵士たちの声が戦場に響き渡り、私はその様子を見て、心から安堵する。そして、仕上げに入る。
私は再び祈りに入り、先ほどの祈りの光はさらに輝きを増す。そして、ある人物を探し出すかのように天空を舞う。その光はやがて剣となり…、目的の人を見つけたのか、一瞬動きを止める。それからしばらくすると、その光の剣は視界を完全にシャットダウンするかの如く強烈に瞬き、先ほど消え去った莉奈の体をありとあるゆる方向から突き刺していく。その凄まじい威力に、その場に倒れこむ莉奈。
「これが、莉羽の力なの?」莉亞が何とか目を開き、その光景を見つめる。
「莉羽!」アーロの声が聞こえる。
「莉羽!」
コンラードをはじめ、たくさんの仲間たちの歓喜の声が、私の中に響いてくる。
そして私自身も、凱の結晶が体内に入り込んだことで獲得した凱の力に驚きつつ、セージガルドと対峙する凱の隣に立つ。
「更なる力を手に入れたんだな。」凱は横目で私を見る。
私も敵の動きを警戒しながら横目で凱を見て、
「凱とお母さんのおかげだよ。ありがとう。」
「なんだよ、突然。」
「そう思った時に伝えないと…、って凱がいなくなってから気づいたの。」
「そうか…。」
「うん、だから言うね。」
「何を?」
「もう私を1人にしな…。」私が思いを凱に伝えようとする前に、敵の不意打ちをくらう。
あらゆる方向からの攻撃に対処できるように身構えていたはずだったにも関わらず…、だ。
「莉羽!」凱が私のもとに飛ぼうとするが何者かによって阻まれる。
「何が起きたの?」私は攻撃を受け、血が止まらない脇腹を押さえながら声を振り絞る。
「まさか…?」凱は、背後から感じる不気味な気配にゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、祈りの光の剣により瀕死状態になったはずの莉奈の姿があった。




