表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/494

【メルゼブルク大戦⑪~挙式の行方~】

 

 そう言い放った莉奈と凱は、一歩ずつ国王ハラール2世のもとに近づいていく。


 病魔により日に日に体を蝕ばまれているハラール2世は、両脇に魔法医師団を侍らし、何とか式に参列しているようだ。若き次期国王夫妻に、この星の未来をようやく託すことが出来るのだと、生気を失った王の瞳には少し安堵の色もうかがえる。だが、それは私の知るところではない。私は何としてでもこの式を止めなければならない。


『どうすればいいの?こんな状況を目の前に何も出来ないなんて…。』


 2人は国王の前に跪くと、国王から何かしらの声をかけられ、それから加護の魔法を受ける。続いて2人は自分の魔石を取り出し、その2つを台座に乗せる。それは誓いの口づけの後、国王の力により融合され、再び分割されてお互いの守護石となり、一生2人を守り続けると幼き日に乳母に教わった事を思い出す。


 私は為す術のないこの状況に、涙が自然にあふれ出てくるのを感じる。


『凱…。私は本当に何もできないの?ねえ、凱?本当に莉奈と結ばれてしまうの?』


 私は常にお守りとして、肌身離さず持っている凱からもらった結晶のかけらを取りだすと、片方で握り、もう片方の手を合わせて自分の非力さを悔やみながら、この事態を何とか打破できるよう強く心の中で祈り始める。


『どうか、神様…。仏様でも、どなたでもいいです。凱の洗脳を解いて、この式を止めてください。じゃないと…、もう、私は生きていけない…。』


そう心で泣き叫びながら祈る気持ちの強さで、手の中の結晶が細かく砕け、手のひらに突き刺さる。


『痛っ。』


 私は握った手をゆっくり広げていく。すると、結晶が突如液状化して、そのまま傷口から体内に入りこんでいこうとしている。


『え?何?』


私はぞっとして、その液体を取り払おうとするが、すでに私の手の中から体内に入りこんでしまった。すると次の瞬間、激しい目まいを感じ、その場に立っていることも難しくなる。吐き気と頭痛、私はとうとう膝から崩れ、地面に顔をつけ倒れこむ。


『私はここで死ぬの?何もしてない、何もできていない。神遣士でありながら、常にみんなに助けられ、自分からはみんなに何も返すことができず、役立たずなままこの世を去るの?』


そう自問自答している私の中で、突如、凱の記憶が頭を占拠する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ