【メルゼブルク大戦⑨~莉奈の力~】
「みんな!」私のモチベーションが一気に上がる。
「王宮にたどり着くまで、ほとんどの隊が魔物のトラップに惑わされて、遠回りを強いられました。後方は私たちにお任せください。」兵士の1人が報告する。
「ありがとう!お願い!」私はそう言うと、再び莉奈と向き合う。
「あらあら残念。もう少し消耗してくれればよかったのに…。」莉奈はそう言うと、着ていたドレスを脱ぎ棄てて、予め着ていた戦闘服姿になる。
「そろそろ本気で行こうかしら…。」
そう言って莉奈は大きくジャンプして塔の上に立ち、周りを見回して戦況を確認し目を瞑り、魔法を唱え始める。その姿は悪の女神のように妖艶な美しさをたたえ、戦う者たちを魅了する。
『破壊神の加護の元、戦う戦士たちよ。ここに降りたった12支人に力を与えよ。さすれば、理想の世界がお前たちに約束される。今ここに全ての力を集約せよ。』
言い終えると剣を振り上げ、再び何かを唱え始める。するとそれに反応した全ての魔物が動きを止め、自分たちの魔力を莉奈の振り上げた剣に向けて放ち始める。それはまるで空を縦横無尽に走る稲光のように、閃光を放って莉奈の剣に吸収される。
魔物からの魔力の放射が終了すると、今度は莉奈がロイをはじめとする仲間たちにその力を分け与える。
「莉奈が本気モードに突入したようだな。ははははは。そうなればお前たちに勝ち目はない。ここで、THE ENDだな。」
莉奈から力を分け与えられたクラウディスは、先ほどまでと別人のような強力な魔力をたたえている。
「うそ…。魔力が桁違いになってる…。」私は無意識に言葉を漏らす。
『今までだって、みんな何とか戦っている状態だっていうのに…。このままじゃみんなが危ない…。』
私が次なる手段を考えている間にも戦闘は再開していた。
そして事態はさらに、私たちに不利な状況に向かう。莉奈に自分たちの魔力を捧げた魔物たちは、先ほどより力を増大させ、騎士団とファータの民を襲い始めたのだ。
『なんで?魔力を莉奈にあげたんじゃなかったの?なんでこいつら強くなってんのよ…。』私は心の中で魔物たちに突っ込む。
また、12支人と呼ばれている元仲間たちによる執拗な攻撃で、私の隊の仲間たちは追い込まれ、次々に倒れていく。その光景を目の当たりにし、
『みんなが窮地に追い込まれている…。私はどうしたらいいんだろう…。私の力だけじゃ無理だ…。』
そう私が心の中でつぶやいた瞬間、辺り一面が真っ白な霧に包まれる。




