【メルゼブルク大戦⑧~あなたは最強~】
「エドヴァルド…、ごめんなさい。ありがとう。」
耳鳴りが収まるようにと回復の術も施してくれるエドヴァルド。そして、
「実のお姉さまとの戦いです。相手がいくら洗脳されているとはいえ、全力で戦うことなど本来難しい事…。でもおそらく皆、自分の大切な人と同じ思いで戦っていると思います。私もできるだけのサポートをするので…、心だけは強く持って。今は私があなたの眞守り人です。」そう言って私の手を引き、立ち上がらせるエドヴァルド。
「ありがとう、エドヴァルド。」私は目を潤ませながら感謝の言葉をかける。
「大丈夫、あなたは最強なはずです。その力を見せてください。」また笑顔で私を送り出す。
「うん。」私は頷き、前を向く。そして、ふと今のエドヴァルドの言葉に懐かしい響きを感じる。
【大丈夫】
その言葉に私は凱を思い出す。凱が私を安心させるためにいつもかけてくれる言葉。どんな困難を目の前にしても、凱は必ずこの言葉を言って私の背中を押してくれた。私は流れる涙を拭きはらい、上を向いて笑顔で呟くと、視線を莉奈に向け、一歩ずつ距離を縮めていく。そして一気に、
「闇夜術『如法闇夜』」視界が完全に闇化する術を小声で唱え、続けざまに、
「響音魔法開示請求第72『ノイザーソード』!」叫びながら、私は莉奈の胸元に入りこみ、音魔法で作られた剣を首元に突きつける。
「早く凱の洗脳を解きなさい。じゃなかったら、この首かっ切るわよ。」額から汗が一筋流れ落ちる。
「あなたにできるかしら?気弱な、莉羽。」莉奈は首に剣を突き付けられながらも余裕の表情で、私をあざ笑いながら挑発すると、
「凱!莉羽を殺って。」
それまで微動だにしなかった凱の目が光り、何かを唱えようとしている。私はその様子に命の危険を感じ、すぐさま莉奈から離れ、凱からもらった結晶のかけらを握りしめ、祈る。すると凱は何かに縛られたかのように再び動かなくなった。そしてそれ以降、攻撃してくる気配がない。
『突然凱が動かなくなったのは…、凱がくれたこの結晶の力?この結晶が私を守ろうとしてくれている?ということは、これを持っている間、凱は私を攻撃してくることはない?莉奈の命令も無効?だとしたら…。』
結晶を見ながら考えていると、いつの間にか周りに無数の魔物たちが現れる。魔物は切っても、切っても湧いて出てくる。きりのない戦いに私は術を唱える。
「媳滅術『雲散霧消』」辺りに雲が立ち込め、その雲の中に入った魔物はすべて霧状になり死滅する術で一気に殲滅する。
「これの繰り返し?これじゃ単なる消耗戦だし、圧倒的に数が少ない私たちにとってこの状況は不利だわ…。」と意気消沈しかけたところに、
「莉羽様、遅くなりまして申し訳ございません!」
まだ到着していなかった、多数のシュバリエ、ファータの兵士が王宮内に入ってくる。




