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【メルゼブルク大戦⑤~辛いのは自分だけじゃない~】

 私はあまりの衝撃に、しばらくクラウディスの言葉を理解できずにいる。愛してやまない人…、自分の姉…、結ばれる…、私は一気に我に返り、


「なっ、何を言っているの?そんなこと…。あるはずないじゃない!」私は瞬きするのも忘れ、そのまま凱のいた方向を見上げる。


するとそこには、再び現れた凱に寄り添いほほ笑む莉奈の姿があった。


「そんな…、そんなことあるはずが…。」私はその場に立っていられずしゃがみ込む。


「ごめんなさいね、莉羽。凱は私と結婚することを誓ったわ。だって神遣士っていうあなたとバートラルである凱が結ばれたら、世界が破滅するんでしょう?しょうがないじゃない?それとも…、世界が滅んでもいいの?」高らかに笑いながら続ける莉奈。


「そういう訳にはいかないわよね。ねえ、凱。」表情を変えない凱。その様子に、


「凱を洗脳したのね…、凱を返して!」私は怒りに我を忘れ、しゃがみ込んだまま術をかけようとすると、


「待って、莉羽。」みんなが私を囲む。


「莉羽、落ち着いて。あなたの気持ちはわかる。でも…、この戦いはこの世界の運命を左右する戦いになる。あなたは神遣士よ。ここはまず、みんなでどう動くべきか考えなきゃ。」莉亞が私を諭そうとする。しかし、そんな事などどうでもよくなってしまっている私は、


「みんなに私の気持なんかわかるわけないじゃない。だって…。凱が…。莉奈と…。」私は興奮のあまり呼吸が乱れ声が出せない。


「莉羽、君の気持ち、俺たちは分かる…。ここにいる皆、大切な人が洗脳されてあちら側にいるんだ。君だけじゃない。厳しいことを言うかもしれないが…、今は耐えてくれ。」さっきまで怒りに支配されていたハルトムートが私の肩を抱く。


私はしばし呆然として、焦点が合っていない目で遠くを見つめる。すると、またポケットの辺りがじんわりと温かくなってきていることに気付き…、我に返る。そして、


「ご…、ごめんなさい、みんな。みんなもそれぞれいろんな思いを抱えてるっていうのに…。私、自分の事ばっかり…。神遣士なのにね…。情けない…。」私は涙を堪えて皆に頭を下げ、続ける。


 「みんな、私を戒めてくれてありがとう。私たちがここで勝たないと…、世界の未来がなくなるっていうのに…、私何を考えてるんだろうね…。辛いのは自分だけじゃないのに…ほんとにごめんなさい。うん…、大丈夫。気持ち、切り替えられるから…。


 そう、だって、神遣士だから…、大丈夫。やる。やれる。


 みんな、厳しい戦いになると思う。敵の力も能力も未知数。私たちの力もまだ未知だけど…。全開で行こう。」私は自分の立場、目の前の状況を考え、何とかこの言葉を絞り出す。


 仲間たちも辛かったはずだ。私の凱への気持ちを十分に知っているからこそ、そんな私に酷な言葉をかける気持ちを考えると、心がとてつもなく痛かったに違いない。でも、ここで立ち止まっていては世界の未来がなくなることも分かっていた。彼らとしては苦渋の行動であったことは間違いないが、今ではその行動に私は感謝する事しかできない…。


私の言葉に、


「おう!」全員が苦しいながらも、戦意を取り戻す。もちろん、その中に私の気持ちを推し量り涙を堪える者もいた。しかし、皆、自分たちの使命の為にそれぞれの思いを我慢し、前を向かなければならない状況だった。


※※※ 


「ふっ、下らない茶番に付き合ってられないよ。まとめてつぶすから…。覚悟してね。」クラウディスはそう言うと、初めから猛攻をかけてくる。


跳ね返しても、跳ね返しても止まぬ攻撃。前回の戦闘よりさらに魔力が上がっているのを肌で感じる。そして彼は同時に魔物を上手く使い、私たちの仲間を分散させるよう誘導する。


『みんな、出来るだけ今の場所から離れないように戦って!クラウディスは私たちを分散させようとしてる!』


 私は全員の心層に語りかけるが、魔物が少しずつ戦闘範囲を広げ、シュバリエ、ファータの兵たちが多大な被害を受けている。それを見過ごすことが出来ない私たちは、否応なしに敵の術中にはまっていく。


 そしていつの間にか、


ロイとフィン、


アラベル・マグヌス・ハルトムートの3人とアレクシア。


アーロ・リディアとアーロ姉ケイト・ミディア。


響夜と莉亞。


コンラード・ジルヴェスターとヴァランティーヌ。


私・エドヴァルドとクラウディス・莉奈・凱という構図が出来上がっていた。


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