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【メルゼブルク大戦④~迫りくる最恐の洗脳~】

 私たちに緊張が走る。予想だにしなかった言葉に私たちは動揺し、自分たちの耳を疑った。


「なぜ、凱が?本当なの?」


 莉亞はそう言ってから、私の気持ちを推し量るように、瞬時に移動してきて私を抱きしめる。


「莉羽…。」


 莉亞のぬくもりを感じ、私の目から涙がこぼれ落ちる。私の悲嘆に満ちたその姿は、皆の心の支えとなっている、「神遣士とバートラルの揺るがぬ絶対的主従関係」の終わりを感じさせた。誰もが言葉を失ったその時、


「どおりで凱の顔が氷のように冷たい表情に見えたわけだ…。」フィンが思わず小声で呟く。私以外の全員が一斉にフィンを見る。


「お兄ちゃん!」


 アラベルがフィンを叱責し、背中を思いっきり叩く。ようやく事態を把握し、焦ったフィンは、


「あいつのことだ。きっと、あっちの手に落ちた「ふり」をしてるに違いない。なっ、マグヌス。」突然振られたマグヌスは動揺するが、


「そうです、凱に限ってそんなことはないはずです。」何とか落ち着いて返す。


※※※


 一方、莉奈はクラウディスのおしゃべりに、ほとほと呆れ、


「クラウディス、あなたを先頭に出すのはもう止めるわ。いい加減、おとなしくしていなさい。これ以上出過ぎた真似をすれば、ラーニー様が直々に罰を下すわよ。」そう言って、蔑むような目でクラウディスを見る。


「そっ、そんな莉奈ちゃん。確かにいろいろ口は滑ったけど…。」肩を落とすクラウディスに、


「ほんとにどうしようもないわね…。ここで莉羽達を始末できなかったら、さっきの話が現実のものとなるわよ。ちゃんと反省しなさい。」そう言い放って、莉奈は姿を消す。


「くそっ。全くあの女…。ラーニー様のお気に入りだからって、私に向かってあんな口を聞くとは…。


 まあ、あいつらもようやく出てきたようだし…。ここで莉羽達を始末してやるか…。」クラウディスは、隕石の中から出てきた仲間たちを出迎える。


その見覚えのある姿にフィンが、


「ここで現れるか?あいつら…。いやぁ、不利だね。」フィンが少し顔を引きつらせて言う。


「あの人達…、ものすごい力を感じる…。って、なんで、僕の姉さんと…、ミディアがあっちにいるの?」そう言うアーロの声が震えている。その隣で事を悟った莉亞が、アーロの手を強く握る。メルゼブルクの仲間はまだ12支人について何も知らなかった。そのため、アーロやリディアは激しく動揺している。


「あいつらが、あっちの『神』と呼ばれてる奴の手下、12支人さ。」フィンがそう言うと、ハルトムートが、


「あれは…、アレクシア!」敵の中にアレクシアの姿を確認したハルトムートが前に出ようとするのをフィンが止める。


「ハルトムート、落ち着け。彼女も洗脳されている。」


「どうして…?放してくれ…、やっと会えたんだ。フィン、放せ!」ハルトムートは何もできない歯がゆさから剣を地面に投げつける。


「気持ちは分かります。私たちのアースフィアの父もあそこにいます。でも、洗脳が強すぎて手の出しようがない。」莉亞はハルトムートの肩に手を置いて諭す。


 私たちが自分たちの目の前の想像をはるかに超えた状況に動揺し、正常な思考を取り戻せずにいる中、クラウディスが話し始める。


「莉羽、お前が神遣士だということは分かっていたけど…、こんなものだったとはね…。期待外れもいいところ。そして、眞守り人バートラルがこちらの手中にある限り、君本来の力は発動されない。私たちの12支人も揃いつつある。君の悪あがきもここまでということだ…、ね。」不敵な笑みを浮かべるクラウディス。


「12支人?ほんとにミディアたちの事なの?ねえ、嘘だよね?」アーロが問う。私はアーロの問いにただ首を振るしかない。


仲間たちは私の無言の返答に、拉致された自分の大切な人たちが敵の重臣となっている事実から逃れられることが出来ないのだと絶望を感じ、失意の言葉を漏らす。


「まさか、ミディアが…。」

「姉さん…。」

「アレクシア…。」


私はそんな仲間たちの思いを代弁するかのように、大声でクラウディスを罵倒する。


「クラウディス、自国の民を欺き、神をも欺き、愚神の理想を民に強いるなんて…、どこまで愚者に成り下がるというの。絶対に許すことは出来ない。覚悟して。」私は怒りに満ちた声を震わせて話す。


私の言葉に最初は引いていたものの、すぐにふてぶてしい笑顔を見せると、


「ああ、かわいそうに、莉羽。一生懸命大声張り上げて、啖呵切ってるけどさ…。いいかい?今から君が見る現実に、君が耐えられるかどうか…、それにすべてはかかってる。

ああ、でも無理だろうな~。だって…、君の愛してやまない男が、自分の姉と結ばれようとしているんだからね~、ああ、可愛そう。ほんと愚かだね。笑止千万。哀れ極まりない!」


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