【メルゼブルク大戦③~刹那の再会~】
「凱!」
私の目から涙があふれる。そこにはメルゼブルクの王が着る礼服に身を包み、王のみが持つことが許される魔杖を手にした凱の姿があった。しかし、凱の姿を確認できたことだけで胸がいっぱいの私には、服の事など目に入らない。
「凱…。生きてた…。凱。良かった…、ほんとに良かった。」私は両手を胸に当て号泣する。
私のその姿を見た莉奈があざ笑い、そして凱に声をかける。
「凱。あなたは下がって。」凱は莉奈の言葉に従い、凱は術言を呟きその場から姿を消す。
「ちょ、ちょっと待って!凱!」私は、喉がつぶれる位の声を振り絞って叫ぶ。
私の取り乱す様子を楽しんでいた莉奈の表情がいよいよ狂気の笑顔に変わり、
「面白いこと考えちゃった!明日、即位式と…、思ったけど、今からやりましょうか?そうよ、それがいいわ!我ながら名案!即位式がしっかり見えるところに、あなたたちの席を設けましょう。そう、あなたたちの首を置く席をね…。」そう言った、莉奈の口に手を当てる男。
「おっと、それ以上怖い事は言わないで、莉奈ちゃん。クールビューティーも良いけど、それ以上は…醜悪だぜ。」
そう言葉をかけたのは、先ほど落ちてきた隕石の中から出てきて、私たちの何千もの尊い仲間の命を奪ったクラウディスだった。
「ちょっと、やめてよ、クラウディス!」口を押さえられた莉奈は、クラウディスの手をどけて文句を言う。クラウディスはそれを見て笑いながら、
「可愛い顔して、どSだね、莉奈ちゃんは…。やれやれ…。それに対して妹の莉羽ちゃんは、ほんとに優しくていい子だね~。僕はね、優しい子が好きなんだよね。だから莉奈ちゃんは、有りか無しかっていったら…、無しなんだよな~。」そう言い終える直前に莉奈に、
「黙れ。」と足蹴りされるクラウディス。
「こういうところなんだよ…。全く、怖いったらありゃしない。
それはそうと…。ああ、そうそうファータで思ったけど、莉羽は分身の術でも使ってる?おんなじ顔がもう1人いるよね?」莉亞をじっと見るクラウディス。
その視線に生理的な嫌悪感を感じた莉亞は、エドヴァルドの後ろに隠れる。
「いやいや、隠れても無駄ですよ。それに、シュバリエとファータ、メルゼブルクの連合軍の皆さんも、強~い、強~い私たちが出てきたからって逃げるなんて許しませんよ~。僕たちがあなたたちを「神」のもとにお連れしようとしているのですから…。」クラウディスは明らかにこの状況を楽しんでいる。
私は唇を噛みしめ、クラウディスを睨みつける。すると、
「潤んだ目で睨みつけられるのも、なかなかだね。ふふふ。まあ、凱もこちらの手に落ちてるし、君は足元が見えずに仲間同士で【仲良しこよし】してるし…、僕の存在に気付いてないし…、どう足掻いても無理だから、泣いてないでこっちにおいで、莉羽ちゃん!」クラウディスは私の方に手を差し伸べる。
その瞬間その手にナイフが突き刺さり、驚いたクラウディスの視線の先には激怒する莉奈の姿があった。
「クラウディス、余計なことをペラペラと…。」
莉奈は怒りで顔を真っ赤にしながら、今にもクラウディスを殺さんとばかりに睨みつけている。
しかし、莉奈とクラウディスのそんなやり取りなど、私にはもはや関係なかった。
「クラウディス!今、何て言ったの?凱があなたたちの手に落ちた…?」




