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【メルゼブルク大戦②~城壁の上に立つ男~】

「ねえ、莉奈!誰の即位式なの?答えて!」私の鬼気迫った表情を見て、にやりと笑った莉奈は、


「さあ、ファーテージ。この者たちを殺っておしまいなさい。」そう言い残し、その場から消える。


「グワァー」


 莉奈の声に、地上にいたファーテージは再び咆哮を上げると、辺りの木をなぎ倒しながら助走をつけ、突如背部から生え出た翼を羽ばたかせ、塔の最上部にいる私たちに迫ってくる。それと同時に体中を覆っていた羽を一気に矢のように変形させ、地上にいる兵士たちと塔にいる私たちに向けて放つ。


 突然の大量の矢の雨に、次々倒れていく仲間の様子に、一瞬怯んだフィンの顔を矢がかすめ、フィンは今までの戦いの中で初めて後ずさりする。


『なんだ、あいつ…。』


 空を飛び回るファーテージを睨みつけ、そう呟いた刹那、フィンは目を緑色に光らせると同時に空中に瞬間移動して、一気に抜いた剣でファーテージの巨体を真っ二つに切り裂く。私は突如目の前に現れたフィンの姿と、落下していくファーテージの巨体を見て息をのむ。


「あぶねぇ…。」地上に降りたフィンは頬の傷を手で拭いながら駆け出し、目前の翼魔を踏み台にして飛びあがり、 落ち行くファーテージの分裂した巨体から生まれ出た2頭の魔物の一頭を、頭上から剣で突き刺そうとする。それが頭に突き刺さる直前、もう一体の魔物の手が伸び、フィンの剣をつかむとそのままぐるぐるとふり回し、そのまま飛ばされたフィンの体は城壁に打ち付けられそうになる。


「フィン!」


 私は瞬時に外壁とフィンの間に加護の層を作り、フィンはその中に包み込まれ、難を何とか逃れる。


「ありがとう、莉羽!」フィンが叫んでいる。私はその姿に安堵すると、


『あの生まれ出た2頭の魔物だけど体が小さくなった分、ファーテージより動きがとてつもなく早い。しかも…、ファーテージよりも強力な魔力を感じる。とんでもない魔法を使ってくるかもしれない。油断しないで、みんな!』仲間たちの心層に伝える。


 私の声に、アーロは目を閉じ呪文を唱え始める。その間、いつの間にか合流したエドヴァルド、ジルヴェスターが両サイドに別れ、2頭の魔物の周りの何百という魔物の殲滅にかかる。


 すると、その奥に再び莉奈が姿を現し、


「莉羽、あなたの探し物はこの奥。まだ先よ。果たしてそこまでたどり着くかしら?セージガルド、召喚して。」


「御意。」


 莉奈の命令に、隣にいた長身で細身の老人が何やら言葉を発し始める。するとその老人の頭上に暗雲が垂れ込め、稲光が走る。その光に呼応するかのように、暗雲の中から巨大な隕石が現れ、落下した瞬間、地響きが大地を揺るがす。


「今度は何よ?!」莉亞がエドヴァルドに掴まり、何とか立っている状態で少しキレながら吐き捨てるように言う。


 その直後、ファーテージから生まれ出た2頭が雄たけびを上げる。するとその隕石に少しずつ亀裂が入り、中から数人の人影が出てくるのが確認できる。


「ようやく出番ですか…。ずいぶん待たされて…。ちょっと機嫌がよろしくないのですよ!」その内の1人がそう言って両手を広げると、空から何千という数の槍が降り注ぎ、その場にいた何百という仲間が一気にその犠牲になった。私はその光景を前に怒りに震える。


「何なの、あいつ…。私の仲間を…、いとも簡単に…。」強く握りしめる拳をアーロは優しく握り、


「怒りは何も生み出さない。心を落ち着けて、莉羽。僕が手を握るから、頭の中からあいつを排除して。大丈夫、あいつは必ず僕がやっつけるから。」アーロの顔を見ると、彼は微笑んでいる。


 出会った頃とは別人のように大人びた笑顔だ。そして、


「莉羽にとって辛い現実が目の前に…。だから、それに耐える心を…。」そうアーロが言いかけたところで、


「莉羽!あそこ!」


 莉亞が城壁の上に立つ男を指さす。


 私はその姿を見た瞬間、心が締め付けられるような感覚に襲われ、そして自然に手を出し、叫ぶ。


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