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【メルゼブルク大戦①~アーロの懸念~】

 

王宮を目の前にして、突然アーロが立ち止まる。


「どうしたの?アーロ。」私はうつむいたまま動かないアーロの肩に手をかけ尋ねる。


「出る前から様子がおかしいとは思ってたんだけど…、体調でも悪いの?」アーロは首を横に振って、


「違う、大丈夫。」と言うと顔を上げ、私の顔を見ながら、


「この先に、莉羽にとって見たくないもの、知りたくないものが待っていると思うけど…。僕が守るから…、大丈夫だから、莉羽…。」手を握り、真剣な眼差しでそう話すアーロ。


私はそのアーロの懸念が何なのか分からず詰問する。


「この先に何があるの?さっきから変だけど、それが関係しているの?ねえ、どういうこと?アーロ。」


アーロの目に、私は少し怖ささえ感じる。


「大丈夫、俺が君を護るから…、行こう。莉羽。」自分に何度も言い聞かせるように呟いてから歩き出すアーロに、私は訳が分からないまま続く。


※※※


門から王宮内部に入っていくにつれて、魔物のレベルがまた更に上がっていく。


 今までの戦いは、多くて3回の攻撃でほとんどの魔物を倒すことができた。しかしここに来て、かなり手こずるようになり、仲間たちの中に焦りの色が見え始める。


 敵を切り終えた私が剣を鞘に納めると、塔の最上部から聞きなれた声が聞える。


「ファーテージ、出て!」その声に飛び出してきたのは、体長15mもありそうな大型の魔物。


「グワァー」響く咆哮は、私たちの耳を劈くほどに強烈で、その周りにいた魔物たちを呼び寄せているのか、地面を覆いつくすほどたくさんの魔物が私たちの周りを囲む。そして、そのファーテージと呼ばれる魔物の再度の咆哮で、集まった魔物は一斉に攻撃を仕掛けてくる。


 私とアーロの部隊は、連携しながらそれらの魔物たちを次々に掃討していく。しかし、倒しても倒しても現れる魔物の掃討に精いっぱいの私たちは、ファーテージの巨体に近づくことも、ダメージを与えることも出来ずにいた。


「アーロ、ファーテージとかいう「でか物」は無視して、その他の翼魔の体を踏み台にしながら塔の最上部まで上がろう。」


 私の提案にアーロは頷くと、空を舞う翼魔の背中から背中に飛び移り、徐々に塔の最上部まで近づいていく。戦いの最中、横目で塔の上部を見ると、そこには見慣れた顔があった。


 腰まで伸びる紫色の髪、その色と同じ瞳を持つ美しい女性。その姿は、よく知るアースフィアでのそれとは異なっているが、生まれた時からともに過ごしてきた姉の莉奈であることに気づくのに時間はかからなかった。


「莉奈!」私は大声で呼ぶ。莉奈はちらっとこちらを見て、私に気づいたようだが、こちらを見向きもせず、


「この者たちは、神聖なる即位式を妨害しようとしているこの星の反逆者です。…あなたたち、全力をもってこの者たちを排除なさい。」と魔物たちに命令を下す。


 私は言葉に一瞬耳を疑った。


「莉奈!今、即位式って言ったの?誰の即位式?ねえ。」私は声の限り叫び問う。


 この星において即位式を行うほどの力を持つ者は限られている。私の父が生前就いていた魔法省最高責任者メルジスティアード、もしくはこのメルゼブルクの王室の者たちである。


 父であるメルディスティアードの死後、私が継承するはずだったその称号の継承については、魔導書盗難の件以降頓挫している。とすると、王室関係しかあり得ない。クラウディスが国を捨て、敵側に着いたことから第一皇子、つまり皇太子の座も空座になっている。


 それに加えて第二皇子である凱に関しては、魔導書盗難の件で処刑騒動があり、どちらにせよ王として即位できる状況にないはずだ。この状況で即位式を強行しようとする裏には何かあるに違いないと、莉奈に問う。


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