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【第12夜⑤ ~メルゼブルク大戦の幕開け~】

 アーロと別れ、私たちは彼らとは別ルートで王宮に向かう。


 行く手に現れる何千という魔物と壮絶な戦いを経る中で、多くの仲間が傷つき、倒れ、その命を失っていく。その状況で、一気に何十体もの魔物を相手にしている私には、仲間を助ける余裕すらなく、その繰り返される惨劇に幾度となく心が砕けそうになる。しかし、厳しい事だがこれが現実であり、私の宿命なのだと自分に言い聞かせ、前に進む。そう、凱が戻って来るまでに、私は自分で自分のやるべきことを果たせねばならない。いつまでも凱に頼る自分でなく、しっかりと地に足を付けて自力で立てる人間になろう。そう決意を新たにする。


 私はポケットに入れた「宿世石」「凱からもらった結晶」をぎゅっと握り、私の後ろで馬を走らせる莉亞に声をかける。


「王宮まであと少し。アーロも私たちの北1キロくらいのところを走ってる。体は大丈夫?」


「うん、莉羽のおかげでほぼ完治してる。もう心配いらないわ。ただ…、だんだん魔物の数が増えてきて、どれだけの部隊が王宮にたどり着けるか心配。私たちの部隊も、かなり多くの犠牲者が…。」と悲痛な表情を見せる。


 そう言った傍から、私と莉亞の上空に大型の魔物を視認する。翼が生え、異常に長いくちばしを持つ、体長10mはありそうな魔物「翼魔」が突如急降下して莉亞を咥え、再び上空に舞い上がる。莉亞は術で抵抗しようとするが、「翼魔」の体の周りにシールドが張られているのか、全く通用しない。それに気づいた莉亞だったが、剣術の鍛錬を受けていなかった為どうする事も出来なかった。


「莉亞!」私が馬の背中に立ち、剣を構え、いざ翼魔に切りかかろうとタイミングを見計らっていると、状況を静かに見守っていたコンラードが、小声で呟くと一瞬で翼魔の頭上に移動し、脳天からの一撃で翼魔の首を落とし、くちばしから落下する莉亞を抱きとめる。


「莉亞、大丈夫か?」声をかける父。


「ありがとう、お父さん。命拾いした。」莉亞は、父の腕から自分の馬に飛び乗り、答える。


「こんなに次から次へと魔物が現れるんじゃ、普通に話すのも難しいな。」コンラードは敵のさらなる奇襲に備え、自分の部隊の兵士に【作戦は全て心層】で、と伝える。


 そこから5キロほど走り、アーロの率いる部隊と合流する。編隊を組み直す指示を兵士たちの心層に伝えていると、先ほどまでの魔物とは別格と思われる魔物の大集団に遭遇する。


「ちょっと何なの?この集団。でかいし、攻撃しても全然減らないっていうか、むしろ増えてるじゃない。」私は半ば切れ気味で攻撃に集中する。その事態に、


『さっき隊を組みなおす指示を出したが、そんな時間も余裕もないな…。このまま分散して敵の攻撃を回避しながら進もう』コンラードの提案により、それぞれが分かれて王宮を目指すことになる。


 私は鳥瞰の神術を使って上空から常に全部隊の戦況を確認し、押されている部隊の援護に回る。しかし、それでもなお魔物の数は増える一方で、脱落する仲間もそれにつれて増えていく。魔物の攻撃で倒れ、横たわる仲間の元に、私は降りて涙をこらえながら、冥福の祈りを捧げる。私を援護するため同行しているエドヴァルドが傍にきて、


「莉羽様…、王宮に近づくにつれて、魔物の数が増えているこの状況から考えると…。王宮はすでに敵の手に落ちたとは考えられませんか?」エドヴァルドが私に進言する。


「考えたくないことだけど、その可能性は否定できない…。到着次第戦闘開始…と思ったほうがいいみたいね。」するとエドヴァルドがみんなに、


【王宮はすでに敵の手に落ちている可能性がある。まだ力を出していないものは、ウォーミングアップと思って、アビリティ解放に努めよ!】私たちが心層に語りかけるのとは違う術による伝達方法で、エドヴァルドがファータの能力者に語りかける。


【おお~】次々に声を上げるファータの民。


すると、今まで能力を温存していた者たちが、次々に力を解放し始める。辺りは魔物の魔法と、ファータの民の神術による戦いでさらに激化していった。その様子を見た、周囲の者たちも感化され、あちこちで魔法対神術による戦闘が広がる。


 アーロの部隊は、私たちの部隊とほぼ平行に走り、お互いを援護し合いながら、数々の戦闘を乗り越え、目的地である王宮にたどり着く。


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