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【第12夜④ ~凱の噂~】

 アーロの家には、集められた20人ほどの村人とリディア、リディアの母マーガレットがいた。


「アーロ。急なお願いでごめんなさい。対応してくれてありがとう。」息を切らし部屋に入るなり、私はアーロに伝える。


「そっちも非常事態が起きたんだね。集めた村人は何をすればいい?」アーロは母の手伝いをしながら、私たちにお茶を出してくれる。


「ここに来た、ファータとシュバリエの人たちに、この星の地理、状況、魔法、様々なことを伝えてほしい。彼らは何も分からずここに来てしまったし、魔法についての知識は皆無なの。」


「分かった。数部隊まとめて村人を付けるようにするね。」


「うん、ありがとう。ところで…、ベルガさんは?」私はふと思い出し尋ねる。


「?」リディアがきょとんとしている。


「リディアのおじいちゃんじゃない。」私は呆れたように言う。すると、


「私のおじいちゃんは、私が生まれる前に天国にいちゃったけど…。どうしたの?莉羽。」リディアが言う。


「えっ?」私は困惑して絶句する。


「ねえ、ところで…、莉羽。凱は?」


 アーロはそれが本題ではないだろうと話を変える。なぜかここに来てベルガのことを思い出し気になっていた私は、話題が凱になり少し戸惑う。ようやく回復をみた莉亞がそれに気づいて、


「凱は、この前アースフィアで大規模な地割れがあった時に、おそらくそれに巻き込まれて…帰って来てないんだ…。」私の代わりに答えてくれるが、私に気を遣ってか、声のトーンを抑えているのが分かる。


 私は莉亞にこれ以上気を遣わせないように、


「そういえば、メルゼブルクでも地割れってあった?」思い出したように話題をそらす。


「あっ、うん。5日くらい前だったかな…。今までで一番大きな地割れだった。聖なる泉のすぐそばなんだけど…、王宮からたくさんの皇兵団が来て、あの辺り一帯を封鎖していてどうなってるか分からないんだ。」


「そうなんだ…。地割れ、あったんだね?じゃあ、もしかして凱の手がかりが…。」私がそう言いかけると、


「凱、そうなんだ…。じゃあ、あの噂って…。」アーロが途中まで言いかける。


「噂って何?それって、アーロが私に訴えてきたことと関係ある?」私が問いかけると同時に、


「報告です!魔物の群れがこちらに向かって来ています。直ちにご命令を!」村の見張りの者たちが、声を上げて知らせる。それを聞いたアーロが集まった村人に、


「今から、みんなが担当する異国の部隊の居場所をそれぞれに伝えるから、その場所に向かって!合流したら兵士たちにさっきお願いした内容を伝えて…、最終目的地は…、王宮で。」


 10歳のアーロが的確に指示を出す姿に私たちが驚いていると、集まった村人たちはアーロの指示を受け、一斉に担当部隊に向け、散っていく。


「アーロ?なんで王宮なの?」私は家のまわりを囲む魔物に攻撃呪文をかけながら聞く。


「行けば分かる!とりあえず、僕たちも向かうから…。ゴールは王宮。いいね?莉羽。何があっても逃げないで!

じゃ、僕とリディアは西から攻めてくから…。王宮で。」そう言うと、2人は魔物の攻撃を回避しながら、西方面の兵士を先導して王宮へと向かっていく。


 私は数日後、このアーロの言葉の意味を知ることになるのだが、それまで彼の意味深な言葉が気になって、ずっと不安を感じながら王宮に向かうことになった。



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