表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
230/494

【第12夜② ~口撃の裏にある思い~】

 それはアガーテだった。


「あのさぁ。まあ、一応、話は聞いてきて、大体の事情っていうか、状況は分かってるけど…、あんた、意外に自己評価低いよね。私は言っちゃあ、途中参加みたいなもんだから、偉そうなことは言えないけど…、結構、あんたの戦い方とか、やってる事、普通にえげつないからね。とんでもない力持ってて、それで、こんなに多くの仲間引き連れて…。それで、情けないとか言ってるし…。情けない奴に誰がついていくと思う?それくらいガキでも分かるでしょ。よく考えな。


 まあ、ここまで言ったから、全部言わせてもらうけど…。あんたのその力、私が欲しい位だわ。全く、宝の持ち腐れってこういう事を言うんだよ…。傍から見てると、ほんとにあんた、馬鹿みたいだよ。」


 普段、一切話さないアガーテが声を荒げる様子に、付き合いの長いゲルドとポルトスも目が飛び出しそうなくらいに驚いている。そんな中、ジルヴェスターがアガーテを見て、首を振り、彼女を落ち着かせようとしているが、言い足りないアガーテはそれを無視して吐き捨てるように、


「これだけ言ってもあんたの頭じゃ分からないだろうから、言ってあげる。耳の穴かっぽじってよく聞きな。


 ここにいる奴らが命かけてまであんたについて行ってる理由…。それは、あんただからだよ!


って、何で私、こんなに熱く語ってんの?私まで馬鹿みたいじゃん。」そう言って、その場を立ち去るアガーテ。それを追いかけるようにジルヴェスターも続く。


 それを聞いていた仲間たちは、突然の事に呆気にとられ、言葉を発することが出来ないでいた。当の私も、普段全く話した事の無かったアガーテの言葉に、驚きとそして、感謝しか無かった。


 それからしばし沈黙の時間を経て、私の様子を伺っていた意外な人物がこの空気を一変させる。


「えっと…、まあ、なんだ…。あいつはあいつなりに莉羽を思って…、不器用ながら声をかけてくれたんだな。」その人物は、そう言って苦笑いをして続ける。


「あんな言い方だったけど、アガーテが言いたいのは…、


『大丈夫、俺たちがついている。だから、何も怖がることもないし、自分を卑下することもするな。俺たちを信じろ。』


って、事だ。」そう言って、頭をポンポンとする。私はその人物を見上げる。


 それは、顔を真っ赤にしながらも不器用ながらに凱の真似をしたマグヌスだった。私は泣きはらした顔を、さらに涙でいっぱいにして、マグヌスの手を握る。そして、


「ありがとう…。マグヌス。」そう言って、深呼吸してみんなに向けて自分の思いを伝える。


「私には、こんなにも温かくて、心強い仲間がいるのに、1人で戦おうとしてる自分がいた。みんな…、ごめんなさい。神の声も聞こえない、情けない自分だけど…、ついてきてくれるみんなの為にも、自分がどうにかしなくちゃ、自分が…、自分がって、なってて…。


 凱がいなくなってから、その思いが強くなってきてるのを、莉亞が悟って…、負担をかけてしまった…。だけど、もう1人で背負いこむのは止める。みんなに甘える。みんなありがとう。私、もっと強くなるから…、だから、改めて…よろしくお願いします。」私は頭を深々と下げ、


「ありがとう、マグヌス。ありがとう、ファータのお父さん、コンラード。」そう言って、私はコンラードに抱き付く。突然抱きつかれたコンラードは驚き、少しよろけるが笑顔で私を抱き上げる。


「軽いな。こんなんじゃ、これからの敵に勝てないぞ!もっとしっかり食べろ!」鼻をすすり、照れながらコンラードはさらに高く抱き上げる。


その時、仲間の一番後ろでジルヴェスターに引き止められているアガーテの姿を見つけた私は、


「ありがとう!アガーテ。」と涙でぐしゃぐしゃの顔で伝える。


私の言葉に、一瞬こっちを見てから横を向き、片手を上げるアガーテの頬が少し赤くなっているように、私には見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ