【第11夜⑧ ~シュバリエの地割れ現場へ~】
早朝、私たちは、魔の山の麓にある、元騎士団長ダズフードの邸宅に向かう。大規模地割れの現場が元騎士団長の邸宅周辺で、そこから天空にむけて伸びる光を見たという情報を得た私たちは、おそらくそこに何かがあると睨み、急遽次の目的地をここと定めた。
私たちの部隊の陣形は、最前列をファータの能力者、その後ろをフィン率いるシュバリエ騎士団、そして後方に補給部隊とアラベルがまとめる治癒部隊、それを守るようにして、莉亞の率いるファータの能力者部隊となっている。そして最後尾は、コンラードの率いる王兵団の精鋭たちが控え、今できる最強の布陣を取っていた。
魔の山まで、あと数時間の場所までくると、偵察に行っていた先遣隊が戻り、その隊長のマグヌスが、前回の調査をもとに作成した、魔の山の見取り図を見ながら話し始める。
「魔の山の麓から広範囲にわたって、至る所に魔獣たちが待ち構えているのが確認できた。しかも初見の魔獣の数が増えている。前衛部隊のファータの能力者に、遠隔からの攻撃でどんな属性の魔獣なのか確認してもらい、それをもとに戦法を順次練っていこうかと思うが…。フィン?」
「そうだな…。敵が魔獣にしろ、石の適合者にしろ、どちらにしてもその力が分からなければ、俺たち騎士団ではどうにもできない。マグヌスの言う通り、ファータの異能力者たちによる遠隔攻撃での偵察後、戦法を考えるとしよう…。」
フィンは、昨夜の莉亞の力といい、想像を超えた異能の力に期待を寄せながら、騎士団との効率的な連携を昨夜から考えていた。前回の戦いにおいては、私と凱の力のみで、騎士団の出る幕がなかったが、異能の力や魔法の力だけに任せるわけにいかない。
「前回は、莉羽と凱がメインの戦いだったが、これ以降の戦いは総力戦になっていくだろう…。敵の動きを見ながら戦術を臨機応変に考えていく。みんな気を引き締めて行こう。」
フィンの言葉で全員が再び配置に戻る。そして私たちはいつも以上に緊張感を持ちながら、魔の山へと急いだ。




