【第11夜⑥ ~士気、爆上がる~】
「わが兵たちよ、それぞれの持ち場で聞いてほしい。本日、わがシュバリエに多くの異国の兵士たちが集まってくれた。その件に関して、この方たちから説明をいただこうと思っている。しかと聞いてほしい。」王のその言葉に、何事かと兵士たちは跪く。そして、私たちが一歩前に出ると、兵士たちの歓声がじわじわと上がり始める。
「皆さん、私が此度の戦いの指揮を執る莉羽と申します。そして作戦参謀の母、実戦での指揮を執る妹の莉亞。この3人が中心となり、一連の拉致事件を起こした者たちから、この星を守るため戦います。大丈夫。私たちを信じていただければ、必ずこの国と皆さんの平和を取り戻すことができます。ですから信じてついてきて下さい!皆でこの星のために戦いましょう!」
その後、私が大まかに戦いの全体像について話し、母がその作戦についての詳細を、莉亞は部隊編成についての詳細を説明する。
兵のほとんどが、ドレスで美しく着飾った、若く華奢な女性たちが、まさか戦術についての指示をするとは思っていなかった。また、これほど多くの人々が見守る中で堂々と話す姿に、驚き、その綿密に練られた計画に感服し、そして魅了されていた。ただ美しく華やかなだけでなく、冷静でありながらも熱く語る、その様に皆、心酔したように、
「あんな可愛いお嬢さん方が中心で戦うなんて、俺たちが守らないでどうするんだ!!戦うぞ、みんな~。」見知った騎士団の団員たちも、着飾った私の事を、名乗っていても誰だか分からないようで「お嬢さん」扱いをしてくれる事に複雑な気持ちを感じてはいたが、そんなことは今関係ない。団員の士気を上げることが先決だと自分に言い聞かせる私。
「おお、そうだそうだ!お嬢ちゃん達を護るぞ!」とまず数人が声を上げると、それが連鎖したかのように王宮のあちこちで、今までにない歓声が沸きおこる。
それを聞いていたファータの兵士たちがスクリーンを食い入るように見て確認し、
「可愛いお嬢ちゃんとはなんと無礼な!あのお方は我らがファータの王女、莉羽様であらせられるぞ!」と誇らしげに声を放つ。その言葉に驚いていたシュバリエ兵士たちだったが、私たちのいで立ちに納得したしたようで、
「おお~。なんと異国の姫君か?よし、俺たちシュバリエの民も戦おう!」といつの間にか【お嬢ちゃん】が【姫】に代わっていった。そして、その後も鳴りやまぬ兵士の声。
「私たちもおりますぞ!ファータの民も姫様と共に戦うぞ~。」突如、異国に連れてこられたにもかかわらず、ファータの兵士たちも声を上げる。
その声をきっかけに、シュバリエの民とファータの民の心が1つになる。私たちは皆の声に笑顔で応え、最後に一言、
「皆さんに神のご加護があらんことを…。」そう言って祈る私の姿に、一気にその場が静まり返り、全員が神に祈りを捧げる。
それから私たちがテラスから中に戻ろうとすると、再び王宮内はどこまでも響き渡りそうな兵士たちの歓声に包まれる。
「頼もしいですな。」国王が出迎える。満足げに話すシュバリエ王に、私はさっきまでの笑顔から表情を一変させて、
「ここまで皆さんに歓迎していただいて、心から嬉しく思います。でも正直、不安はたくさんあります。でも…、私には仲間がいます。彼らが私を絶対的に信頼してくれているから、頑張れているようなもので…。とは言え、敵の正体が分からないため、どれほどの犠牲が出るかも正直分らなくて…。兵士の前で豪語しながらも不安はたくさんあるんです。…」少しうつむくとその様子を見た王が、
「戦いに犠牲はつきもの。指揮を執るということは全兵の命を預かるということ…計り知れない重圧に押しつぶされそうになるでしょう。でも、命を想って策を練り、戦うことが上に立つ者の責任であり、それを忘れなければ必ず希望が見える。」王は続ける。
「あなたの未来には光が見えます。信じて進んでください。」その言葉に、王の後ろに立つ側近兼侍女も頷き、その姿に私は涙目になりながら、
「はい。」と答えると同じく涙で溢れそうになっている母、莉亞が私を抱きしめる。
そのわきで鼻をすすりながらフィンが、
「誰かの二番煎じになるのは鼻につくけど…、俺がお前を守るからな!」そう言って、私の頭にポンポンと手を置く。
「ほんとね。どこかで聞いたセリフだわ。」莉亞がほほ笑む。皆の顔に笑顔が戻る。
そして、宴が始まる。王はその様子を満足そうに見て、それから側近の女性と一言、二言話し、そのままその場を後にした。




