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【第10夜⑮ ~引く勇気~】

『莉羽、下の事は気にするな。わしが何とかやっている。全力で反逆者たちを仕留めるのだ!』


『ありがとうございます…。分かりました、お父様。』


王のその言葉で、黒フードの一味に集中できることに感謝しながら、


『莉亞、光の筋の中に光のトンネルを作って!そこに敵を追い込む。』


莉亞はすぐさま、私の意図を理解し、


「承知したわ!」そう言って、祈り始める。すると黒雲から伸びた光の筋の中に、真っ白な光のトンネルが現れ、私たちは彼らをそこに追い込んでいく。


 真っ白な空間の中で、私は何人ものフードを被った敵の中から、ヴァランティーヌ、ただ1人を標的に動いていた。


 今回の裏切りを始め、全てを問いただすために…。


 いつから裏切っていたのか、その間どんな思いで私に接していたのか。聞きたいことが山ほどある。しかし、敵は戦う気がないのか、私たちからの追跡を逃れることだけに集中しているように見える。


「莉羽、奴らに戦う意思はなさそうだ。何か意図があるんじゃないか?」コンラードが、敵の様子からそう促す。続けて、いつの間にか同行しているエドヴァルドも、


「戦う意思があったら、すでに戦闘は始まっているはず。これは、どこかに私たちを誘い込む罠かもしれません。ここは一度お引きになったほうが…。」


「そうね…。でもここまで追い詰めているんだし…。捕まえれば、事の真相が分かる!どうしてもヴァランティーヌに問いただしたい。だから絶対に捕まえる!


で、エドヴァルド、いつの間に?」私は尋ねる。


「地上からどのタイミングで合流するか機会を伺っていたんですが、塔の上層部が落下する寸前に、こちらに合流しました。」


「全然気づかなかった。」私が想像していた以上に、エドヴァルドの能力は高いようだ。


「そうだ、莉羽。見ていて思ったんだけど…。さっきヴァランティーヌの顔を見てから、莉羽の中で彼女の裏切りに対する怒りが徐々に大きくなってきてるのが伝わってきてる。


 でも…、敵の罠かもしれない以上、このまま怒りに任せて付いていくのは危険だわ。それに、私の「石」の事なら大丈夫。必ずこの手で取り戻すから…。少し落ち着こう。」


 ヴァランティーヌの顔を直視し、裏切られた事に対する悔しさ、悲しみ、いろんな思いが再び私の心をかき乱し、怒りに飲まれそうになっている事を理解し、ここで引かないと全員の命に関わると撤退を提案する莉亞。


 そう、莉亞の言う通りだ。さっきまで、冷静に見えていたものが、ヴァランティーヌの顔を見てからというもの、確かに見れなくなっている。こんなに冷静を取り戻せないのも…、


『そうか…、凱がいないからだ。どんな時も、自分がいるから「大丈夫」と背中を押してくれた、その凱が今はいない。私はどれほど凱に依存してきたんだろう…。すごく情けない。もっと強くならなくちゃいけないのに…。


 そうだ。ここで後ろを向いてなんかいられない。私はこの世界を救う。そう「神遣士」なんだから…』


 何度も繰り返す、気持ちの浮き沈みを乗り越えることができない自分に早く決別しなくては…、という強い気持ちを込めて、いつになく声を大にして周知する。


「撤退します!」

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