【第10夜⑭ ~塔の爆破~】
「莉羽、それ以上攻撃をするな。エネルギーが奴らに奪われる!」
コンラードがそう言うと、その隙を狙って黒いフードの手下が、コンラードに切りかかってくる。私はこれ以上能力を使っても無意味だと、剣での戦闘に切り替える。
しかし、その間にもヴァランティーヌはその光の筋を自分たちの方に誘うように、祈り続けている。何とかヴァランティーヌに切りかかろうとするが、思った以上にヴァランティーヌの黒フードの取り巻きに手こずる私たち。
徐々にその光の筋が東の塔に近づき、いよいよその筋に反逆者たちが吸い込まれていきそうになった時、ヴァランティーヌは莉亞の「石」にため込んだ私のエネルギーを、いまだと言わんばかりに放出し、私たちのいる塔の中層部一帯を一気に吹き飛ばす。
東の塔はその衝撃で、上層部はそのままの形を残し落下、下層部はその上部が吹き飛んだ影響で斜めに傾き、中層部は影も形もなくなってしまった。その光景を目にした者たちから、叫び声と悲嘆の声が上がる。
「莉羽様~。」
「王女!」
「あの爆発の中に…、そんなまさか…。」
その後、反逆者たちは黒雲から伸びてきた光の筋に乗って、今まさに黒雲の中に消えようとしていた。
「反逆者たちが…。」
「私たちは負けたのか?」
「もうこの国を救うことはできないのか…。」
兵士たちの心に、絶望という闇が訪れようとしたまさにその時、落下している搭の上層部の中から眩い光が放たれた。そして塔が今まさに地面に落下する寸前、その光が瞬く間に反逆者を乗せた光の筋に向けて飛んでいく。あまりに一瞬の出来事に、その様子を見ていた者は何が起こったのか理解できず、ただ上空を見上げる事しかできなかった。そんな中、
「莉亞、ありがとう!」
「お安い御用よ!莉羽。」私たちはニコッと笑いあう。
ヴァランティーヌが起こした、莉亞の「石」による爆発の瞬間、私たちは莉亞の即座の判断で、塔の上層部に瞬間移動し、その落下の間に私と莉亞の力で、仲間全員を敵の退路である光の筋の先端まで一気に運んだのだった。
それを地上で確認した兵士たちが、絶望から一転、歓喜の声を上げる。
「王女様!」
「偉大なる力を持つ莉羽様、莉羽様はやはり、この国の救世主だ!」
私は上空から地上を見下ろし、被害状況を確認する。すると、倒壊したはずの東の塔が元に戻っているのに気づく。
「どういうこと?」
私が困惑し、頭を巡らせていると、父である国王の声が心層に届く。




