【第10夜⑫ ~メモの絶大なる効力~】
先ほどまで恐怖を感じていた兵士の心層に、声が響き渡っていく。
『ここに集まりし、我が民よ。今まさに起きようとしている戦いは、この国の存続を揺るがすものである。決して侵入者の蛮行を許すことは出来ない。
この我が国最大の危機に際して、私に代わり姫が陣頭指揮を執る。我が誇るべき異能の力を持つファータの民よ。姫を守り、そして皇子を連れ戻し、この国に平和を取り戻すのだ。』
言葉こそ短いものの、この声の主が誰なのかは、ここにいる者全てが知っている。そう、その声は、ファータ国王ルドヴィク13世、国王自ら全兵士に向けた檄を心層を通し飛ばしたのだった。
『王女は、今、王宮の東の塔で、わがファータ国の裏切り者を追い詰めようとしている。皆の力で姫を援護してほしい。』王の檄に私は続ける。
『ファータの民よ。世界を巻き込む戦いの火ぶたが、今まさに切られようとしています。塔に追い詰めているのは、この国を敵に売り渡そうとしている反逆者たちです。彼らはファータの者ではなく、もともと異星から、この国を支配するために送り込まれてきました。
私たちはここで、この反逆者を排除し、私たちの星を守らなければならない。ファータの民が一つになるときが来たのです。皆の力で平和を取り戻しましょう。」その声を聞く全てのファータの民は、この言葉を受け取り、
「姫様がお立ちになられるのか?ならば、私たちも出ないわけには行かない!必ずや姫様をお守りするぞ~!」
「おお~。」兵士たちの檄が王宮のありとあらゆるところから聞こえる。
『ありがとう。私たちは全力で戦います!皆、力を貸して!』そう最後に締めくくると、莉亞から私に向けた心層の声が聞こえてくる。
『莉羽、走りながら話すと息切れそうだから心層で話すね。さっきのだけど、王に渡したメモの意味が分かったよ。王の檄、一番兵士の士気を高めるもんね。』私はドヤりながら、
『心層会話了解です!で、さっきのは、そうそう、王の言葉って大きいじゃない?それに今回はオプションも付いてますよ!』
『えっ、何?』
『兵士に檄を!って書いたメモに、その言葉を聞いた人すべてが、王の加護を受けられるよう術を施してほしいとお願したの。』
『それって結構、力使うでしょ?まあ、王ほどの力あれば問題ないのか…。』
『いや、そうでもないの。その術は一人一人に施すには、さほど力は使わないんだけど、一度に何千とか何万ってなると、王の力を以てしても、相当力を消費することになる。』
『まさか?試したの?王を?』莉亞は勘が良い。
『うん。もし王が白なら、私の願い通り「言葉に加護」を施すだろうし、黒ならこの後、敵側に回ってこの戦いに参戦するだろうから力を残しておきたいはず。でも王は加護を施した。だから「白」…。だと思う!』
『なるほどね、考えたね!莉羽!』
『まあね。』私たちはそう言いながら、高さ100mは優に越していると思われる東の塔を駆け上っていく。すると、
『莉羽、聞こえるか?』コンラードの声が私たちの心層に響く。




