【第10夜⑨ ~裏切り~】
「コンラード、さっきのは血だわ!何かがこの先で起きてる。もしかしたら最悪な…。」と言いかけたところで、宝物庫の護衛が血まみれになって倒れているのを発見する。
「何事だ?」コンラードが声を荒らげて叫ぶと、息絶え絶えの護衛の1人が、
「先ほど国王直属の侍女という方が来て…、突然私たちを切りつけて…。」そこで意識を失う。
私はすぐさま回復魔法を施し、護衛の者の回復を待つ。
「侍女ってことは…。」コンラードが言いかけた時に、もう1人の護衛が何とか起き上がろうとしながら、
「その者はフードを被っていましたが、黒い髪が一瞬見えました。この国では珍しいので…。」何とかお伝えしようと…、力を振り絞って話す衛兵だったが、お腹から血がにじみ出てくるのが見える。
「黒髪…。え?まさか!それで石は?」部屋をくまなく探すが、莉亞の石だけではなく、貴重な石類、多くの宝物、武器などもすでに取られた後だった。
すぐさま私は莉亞の心層に話しかける。
『莉亞!確認なんだけど…、この王宮の侍女で、黒髪の女って、あの人以外に見覚えはある?』
『莉羽?どうしたの?侍女で黒髪って言ったら、あの人しかいないんじゃない?』
『そう…、やっぱり。見つけたら拘束して。』
『えっ?どうしたの?何があったの?』莉亞は私の焦りに、戸惑いを隠せない。
『訳は後で。すぐ動かないとあなたの石が…。』そう言うと、私はコンラードに、
「王のもとに、急いで行こう!」
私はコンラードと共に全力で王の部屋に急ぐ。
※※※
ところが、良いのか悪いのか…、私の心配は杞憂に終わり、王は自室で読書をしていた。ここに誰かが来たわけでもなく、普段の生活と変わりなかったという。
「お父様、無事でよかった…。今、王宮で緊急事態が起こっているので、何かあったら呼びかけてください。私たちは対処に向かうので…。」私はそう言うと、王に「メモ」を渡し、
「読んでおいてください。では。」父の返事を待たずに部屋を出る。
その後、私はコンラードと共に侍女たちの控室に向かう。睨んだ通りの結果が待っていた。
「乳母のヴァランティーヌが消えている」
黒髪と聞いた時点で予想はしていたが、まさかの事態に今にも壊れそうな心を何とか奮い立たせ、至急ヴァランティーヌの拘束を兵に命ずる。




