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【第10夜⑧ ~王宮の宝物庫~】

 集合場所に到着すると、先ほどまでまばらに集まっていた団員が隊列を整え始める。そしてエドヴァルドが一歩前に出て、


「姫様。全ての目的は完了しました。報告は王宮に向かう道中でご説明いたします。」彼の声でその場の雰囲気が一気に引き締まる。


「分かりました。皆さん、ご苦労様。疲れもあると思うけれど、先を急ぎたいので申し訳ないけど…。


早急に王都に帰還します!」


私はそこに整列している団員全員の顔を見回し、お腹に力を入れ声を上げる。


「御意!」


 私用の為と単独で帰ってきたコンラードに内緒でついてきたコンラードの側近たちとエドヴァルドの部隊、合わせて総勢40名ほどが一斉に王宮に向かって馬を走らせる。


※※※


「なんか、帰還とか言って、かっこいいんじゃない?」莉亞が茶化しながら言う。


「ちょっと言葉を選んでみた。けどさ…、帰還するのは私と莉亞とコンラードとその仲間くらいじゃない?」私は苦笑する。莉亞は笑いながら、


「確かに!そうじゃん。」そう言って、また2人で笑っていると、


「言葉を選ぶと言えば…、莉羽様、私の事はコンラードとお呼びください。」自分の馬を私の真横につけて、コンラードは伝える。私は驚くが、それに返すように私も、


「分かった。コンラード!じゃあ、私の事も莉羽って呼んで!」そう言い放つと有無を言わさぬよう、さらにスピードを上げ、コンラードを引き離す。この行動にコンラードは、


「いや、それはさすがに出来ませぬ。莉羽様、お待ちください!」さすがに姫を呼び捨てするわけには…、と感じたコンラードは何とか私に追いつこうと速度を上げる。


「駄目よ!交換条件だから!」私があっかんべーをして言うと、コンラードは頭を掻き、


「姫様ってあんな性格だったかなぁ…。」莉亞の前でボソッと話すコンラードの顔は、穏やかな笑みをたたえていた。


 そしてそれから彼は、自分の後を内緒で付いてきていた自分の側近を追及しに、彼らの走る馬の方に自分の馬を近づける。最初はコンラードの声しか聞こえなかったが、そのうち側近たちと笑いあう声が聞こえ始め、コンラードが部下にどれだけ慕われているのかを感じて、私はなんだか嬉しい気持ちで馬を走らせる。


※※※


 そこから馬を8時間ほど走らせ、王都に到着した私たち。


 母と王兵団との話はすでについており、今後の大まかな作戦や、伝達方法などがしっかりと確立されていた。全13部隊、それぞれの隊長は特殊な力を持ち、あの例の巨人もその中に含まれていた。


 イザークの隊は、莉亞直属となり、エドヴァルドが隊長、ジルヴェスターが副隊長に任命された。母は莉亞が得た新しい力について確認し、その力と連携できる能力者の招集を各隊の隊長に促す。凱がいない状況下では、さらなる戦況の激化が予想されるため、その準備を怠らない。


 私はその間に兵団長コンラードとともに、莉亞の石が保管されている王宮の宝物庫に向かう。


「王が探していた莉亞の「石」だけど、宝物庫に置いておくなんて大丈夫だったの?コンラード。」すっかり敬語も何も無く、普通に話す私にコンラードも、


「ああ、通常誰も入れないように、異能の力が働いているから相当の能力者じゃないと入れない。ここで言うと、俺以上の力の保持者じゃないと無理。しかも、ちゃんと小細工はしてあるから…。」まで言うと、顔をしかめて、


「やっぱり姫様に普通にタメ語で話すなんて…、慣れないなぁ。」ボソッと呟く。私は笑いながら、


「何事も慣れ、だから大丈夫。ふふふ。それにしても、小細工かぁ。楽しみ。」


 そんなやり取りをしながら宝物庫へと続く薄暗い廊下の床が濡れている事に、私は気づく。明かりを近づけ確認していると、コンラードが、


「どうされました?」何事か?という感じで聞いてくる。


私はその液体に、嫌な予感しか感じずに走り出す。


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