【第10夜⑦ ~ファータ王の見えた未来~】
私たちは、仲間との集合場所である、村中央の噴水に向かう。
「ところで団長。イザークで莉亞が現れた時に一緒に置いてあったっていう石は、今どこにあるんですか?」私が尋ねるとコンラードが、
「ああ、あれなら、ルイーゼ…もとい、莉亞が王宮に移り住む時に持って行きました。王宮に戻り次第、莉亞に渡そうと思っています。イザークでの話を聞いた限り、その石を莉亞が持てば、莉亞の力がまた上がるかもしれないんですものね?楽しみです。しかしまさか、ルイーゼ…もとい、莉亞が王女様の妹だったなんて…。驚くばかりです。」
「ふふふ。慣れませんね?莉亞って呼び方…。でもそうですよね?ずっとルイーゼとして育ててきたんですものね。」笑顔で問いかける。
「ははは、お恥ずかしい…。確かに慣れませんし、まさか自分の娘がそんな尊い存在だったなんて…。」
コンラードは明らかになった事実に困惑を隠せず、何度も莉亞をルイーゼと繰り返す。
「そうですよね…、まさかですよね。」私は苦笑いしながら続ける。
「それと…、国王の話になりますが、なぜ莉亞を『呪われし者』と呼んだのか。父である王の力は傍で見てきているので、ほとんどは理解しているつもりです。未来が見えるという力も確かに見てきました。でも…、莉亞をそんな風に言っていたなんて…。」
「そこなんです、私も莉亞を家に連れて行き、すぐさま王宮に向かったのですが…。王は私の報告を、今か今かと待っておられたようで…。しかもあんなに温厚な王が、私の報告を待っている間は人が違ったように荒れていたと…、衛兵から報告を受けました…。」
「そうなんですね?それで莉亞の事は何て報告したんですか?」
「村長から引き取り、殺害した後、地割れの中に遺棄してきたと。」
「王はそれを信じたんですか?」
「ええ、その安堵の表情、忘れもしません。お仕えして初めて見た表情でした。」
「そうですか…。王にはどんな未来が見えたのか…。そして、莉亞がルイーゼとして王宮にいる間、なぜ気付かなかったのか…、もしくは気付いていたのに様子を見ていたのか…。もしくはそもそも見た未来が間違っていたのか…。何が何だか分からないけど、王は何かを隠しているかもしれないってことですね。あんな温厚な父が…、とは思うけれど…。」
「常に国の為、民の為と動いていらっしゃる王のお傍に仕えてきた者としても、理解しがたいものがあります。なぜ…。」私とコンラードは黙りこんでしまう。それを見た莉亞が、
「ずっと王宮で生活してきた私だけど、実は、王には一度も会った事がないの。だから実際会ってみて、王がどんな反応を示すか、ある意味楽しみ。」莉亞がその場の重い雰囲気を壊すように明るく、冗談めかして言う。
「ふふ、莉亞ったら、強く出るね?挑戦的~。」私は笑いながら続ける。
「だって、「呪われし赤子」とまで言われてるんだもの…、どうしてくれようと思うじゃない?」莉亞が企みの笑みを浮かべた後、私たちは大笑いをする。
「目には目を!ね?王にはその言葉の責任を追及しましょう!しかし今の企み笑顔、悪い顔だったわー。」と私が言うと、
「やられたらやり返す!当たり前の事よ!」莉亞がとどめの一言を言うと、私たちはお腹を抱えて笑い出す。
そんな私たちのやり取りにコンラードは微笑む。




