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【第10夜⑤ ~精神崩壊寸前の子育ての中で~】

【前回より】

コンラードは妻を微塵も疑ってはいなかったが、実際、体の弱い娘メイアの看病に疲れ切っている妻の苦労と、育児放棄の噂が立ってしまうほどの莉亞の現状を考え、莉亞を妻と離して王宮に連れていく事にする。

 莉亞はその当時、まだ小さかった為にどうして自分が家を離れることになったのか理解できずにいた。


「家に帰る。お母さんに会いたい。」と最初の数か月間は泣きわめいていた莉亞だったが、泣いても何も変わらないことに気付いてから、父に迷惑をかけないようにと、年の割に聞き分けよくおとなしく過ごすようになった。


 とは言え、訳もわからないまま王宮で生活するようになっていた莉亞は8歳のころ、人を貶めて悦に浸るような愚者に育てられた友人たちから、お前は母に育児放棄され、その母に殺されかけたから王宮に逃げてきたのだと暴言を吐かれる。


 確かに一度もアランドルの家に帰ろうと父から言われない事を考えると、それが真実なのかもしれないと諦める莉亞だったが、事実、莉亞はそれを聞いてからコンラードに、一度も家に帰りたいと言ったことはなかったし、以前に増して聞き分けのいい子になっていた。



 一方、妻バーバラはバーバラで、莉亞が王宮に行くまでは、実の娘であるメイアの看病と幼い莉亞の子育てに追われ、日々忙しく、そのストレスのはけ口もなく、毎日をただこなしているような状況だった。

 

莉亞が家を出て、王宮で生活するようになってから、何となくさみしい気持ちはあるものの、日々遊んでくれ、かまってくれと泣きわめく存在がいなくなった事で、心の重荷が軽くなったように感じていたのは事実だった。狂犬襲撃の件で、自分が周りから心無い誹謗中傷を受けることは耐えがたかったが、莉亞の子育てから解放されることを考えれば、罪の意識など、正直どうでもいい位の心境だったのだ。それだけ彼女の心は壊れていた。


 しかし、初めこそ罪悪感のかけらも感じていない、感じることが出来ないバーバラだったが、病弱だったメイアが順調に成長するにつれて、平常な精神状態を取り戻す。と同時に、自分の莉亞に対する言動を思い出し、その罪の大きさに苦しめられることになった。

 

暴力をふるうまではなかったものの、ようやく言葉が話せるようになった位の幼い子供に、自分が吐いた心無い言葉、心の中で吐き続けた暴言、全てを思い出すと、自分のおぞましい程の非人間的言動の数々で自分を呪う日々を過ごしていた。


 そしていつの頃から、もし許されるならば、過去の罪を謝罪し、償わせてほしいと望むようになっていた。


 一方の莉亞はアースフィアで本当の母である莉月と出会い、記憶が呼び起こされたことによって、自分の存在がバーバラを苦しめていたと感じるようになり、彼女に自分の思いを伝えなければと思い続けていた。



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