【第9夜⑲ ~新しい仲間①~】
兵団長の家までは、あと半日はかかるであろう途中の町で、私たちは宿を探す。30人もの大所帯が泊まれるような大きな宿はなく、私と莉亞、エドヴァルドとジルヴェスター、そして仲間3人は、町長のご厚意で町長宅に宿泊させてもらうことになった。
「突然の申し出を受けていただき、ありがとうございます。」エドヴァルドは町長夫妻に挨拶をする。
2人は私たちの為に、部屋だけでなく食事も用意してくれた。
「いえいえ、まさか姫様が私どもの町においで下さるなんて思ってもおりませんでしたので、町民がそれはもうお祭り状態でして…。お連れの方にもご迷惑をおかけしていないか、冷や冷やしております。」町長は嬉しさと緊張で、顔を高揚させながら話す。
「いいえ、きっと仲間たちも皆、喜んでいることと思います。」私は微笑んで食事をいただく。
「そう言えば…。皆さん、自己紹介もちゃんとせずに馬を走らせてしまってごめんなさい。ここで皆さんとお話できたらと思っています。」私がそう言うと町長が、
「私どもは隣室に居りますので、何かございましたらおっしゃってください。」と気を使って退室しようとする。私は町長のその心遣いに、
「お気遣いありがとうございます。」とお礼を言うと莉亞も、
「何かあったら遠慮なく呼ばせていただきますね。」と笑顔で応える。町長はさっきとは違った意味で顔を赤くして退室する。
※※※
私は改めて全員の顔を見回し、話し始める。
「改めて…、これから皆さんの力をたくさんお借りすることになると思います。今、起きている拉致事件の真相解明につながるかもしれない今回の大規模な地割れ、そして16年前の地割れ。そして莉亞の出生にまつわる国王と兵団長の不可解な行動の解明も目標として進みたいと思います。
それと私たち2人としては、まだ完全に力を解放しきれていないので、この道中でそれを果たせればと思っています。よろしくお願いします。」私が頭を下げると、姫である私が頭を下げたことに皆驚いて慌てて頭を下げる。それを見た莉亞が、
「あまり堅苦しいのは莉羽も望んでいないので気にしないで大丈夫よね?」と莉亞が私に確認する。私は、
「そうそう。そういうの好きじゃないから気にしないで大丈夫。」と言うと、イザークの師団長エドヴァルドが、
「しかし、姫。そう言うわけにはいかないです。」と困惑した表情で話すのを見て、
「じゃあ、適度にお願いしますね。」と微笑む。今まで何度もやり取りしてきたこの件から、私は彼らの立場上、仕方のないことだと理解する。
「さてさて、では皆さん、簡単でいいので自己紹介をお願いしたいです。お名前も分からず、なんとお声がけしたらよいか…。」




