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【第9夜⑰ ~『真紅石を持つ者』~】

 集会所には総勢50人ほどの村人と、王兵団団員が酒を酌み交わし、この地方特有の数々の料理に舌鼓を打つ。私と莉亞も初めはお上品にいただいていたが、今まで食べたことのない料理の美味しさに、何回も頬が落ちそうになり、最終的に3人前くらいは食べていた…?かもしれない…。


 その中でも、この地域に生息する鶏のような鳥類のトルディのひき肉をカランドリアの葉に巻いて、クリームで煮込み、チーズで焼いた『コレル』は絶品だった。最後に残ったクリームをパンに付けて食べるのを楽しみに、何個もいただいてしまった。


「おお、これは、これは。お2人とも、なかなかの大食漢…いや、食いしん坊?ん?たくさん召し上がりましたね?」にこにこ笑顔で村長は話しているが、おそらく内心驚いているに違いないと思いながら、彼の話を聞く。


「皆の者、心して聞くがよい。こちらにいらっしゃるのが、わがファータ国、王女莉羽様。そして隣にいらっしゃるのが妹君でいらっしゃる莉亞様だ。莉亞様は16年前にこの地に現れ、村に栄華をもたらした『真紅石』の保有者である。とうとう私たちの『神』が生誕の地、このイザークに降臨されたのだ。」村長のその言葉に会場は騒然となり、口々に、


「おお、姫様に、『真紅石』の保有者様とは!」


「何の祝い事もないのに、突然宴だという知らせを聞いて、何かあるなと思っていたが…。村長、まさかこんなサプライズを…。」


「なんと神々しいお姿であらせられる!」


「この村に更なる幸福がもたらされようぞ!」歓喜の声で埋め尽くされる。


 私は村人と団員の歓迎の声に十分に応えた後、


「皆さん、本日はこのような宴を開いていただき、心から感謝いたします。私は、先日の結婚式で何者かにより拉致されたエルフィー皇子の捜索と、大規模地割れの調査の為、妹の莉亞とこの村に参りました。隠密調査という形でしたが、思いがけない真実を知ることになり、この村が私たち姉妹にとってゆかりの地であることが分かりました。そして、この村の皆さんの力の話もお聞きしたのですが…、是非皆さんのお力をお借りしたいと思っています。今から、私たちの思いをここに周知し、共に戦う仲間を集いたいと思っています。ぜひ、聞いてください。」


 それから私はこの国の現状、これから起こるであろう戦いについて話し始める。先ほどのエドヴァルドの反応と同じように、その場にいる者たちはその驚くべき現状に、時に溜息をついたり、不安の声を漏らしたりと様々であったが、何とか受け止めてくれたようだった。


 私の話の後、それに莉亞が続こうと壇上に上がってから、この場内の目は一斉に莉亞に向けられ、その口から発せられる言葉を今か今かと待っている。莉亞は緊張から手の震えが止まらない。私はすっと、莉亞の隣に立ち、その手を握る。莉亞は私の目を見て頷くと、大きく深呼吸して話し始める。


「皆さん、私は莉羽の妹の、莉亞と申します。私は16年前、この村にアースフィアという惑星から転移してきました。私と共に生れ出た『真紅石』を今日まで大切に守っていただいた皆さんには、感謝しかありません。その石をこれからも、この村の守護石として扱っていただける事を、皆さんにお願したいと思っています。


 私はこの先、姉の莉羽と共に、エルフィー皇子をはじめ、この星で拉致された人々の捜索とその事件の解明に向かいます。是非、皆さんのお力をお貸しください。皆さんの大切な人たちを必ずや取り戻してみせます。」言い終えると、安堵の表情で会場を見回し、席に着こうとする莉亞。


それと同時に地鳴りのような歓声が起こる。


「何という心強いお言葉だ!」

「姫様!莉亞様!お供は、我々異能力集団のイザークの民にお任せください!」

「皆の者!我々がこのお2人をお守りするのだ!」

「おお~!」


 次々に発せられる言葉は全て、私たちを歓迎し、協力を誓うものだった。私と莉亞は目を見合わせ、立ち上がり、民の前でお互いの手を重ね合わせる。それを見た民の士気はお酒の力もあってか一気に上がり、机の上に立ち上がって私たちに手を振る者、来ていた上着を脱いでそれを振り回しアピールする者などそれぞれだが、私たちと共に…との思いは、私たちの胸に強烈に届いたことは言うまでもない。


「みんな、ありがとう。私たちは明日早朝ここを出ます。力を貸していただける方は明日早朝、この村の時計塔まで来てください。皆さんが来られるのをお待ちしています。」そう私が声を発すると、会場内の全ての者たちが声を合わせ、


「おお~!」と地響きのように村中を震わせた。


それ以降、この宴はさらに盛り上がりを見せ、日を跨いでもその興奮が冷めることはなかった。


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