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【第9夜⑯ ~莉亞の出生の裏に…~】

 私はニヤッと笑って、


「村長、私と莉亞は明朝この村を出て王兵団団長のもとに行きます。その為に必要な人員と物資の準備をお願いしてもよろしいですか?」私のその言葉に莉亞が驚く。


「でも、凱の捜索が先じゃない?」莉亞は目に涙を浮かべながら話す。


「凱の捜索も大事だけどね。でも莉亞…、私は…、あなたの心の方が心配。自分の出生の裏に何があるのか、それを解明しない限りその疑念はあなたの心をずっと苦しめると思う。全てをはっきりさせよう。その裏に何があろうとも、私はずっとあなたの傍にいる。だから…、行こう!」私はそう言って、莉亞に手を差し出す。


莉亞は顔を上げ、私の瞳を見つめて頷き、


「莉羽、ありがとう…。そして、ごめんなさい。莉羽も凱のことがあるのに…。」私はその言葉にむっとして、莉亞の頬に手を当てる。


「なんで謝る?私はそうしたいからそうするだけ。だから、また謝るようなことがあったら…、この手は容赦なく、あなたの頬を引っ叩くからね。」そう言ってニコッと笑う。


「莉羽…、怖い。」莉亞は苦笑いして言うが、その後しばらく私の胸の中で泣き続けていた。


※※※


 私たちはその後、エドヴァルドとその仲間にこの星域のおかれている現状と、問題、これからやるべき使命について全て話しをした最後に、バートラルである凱の話をする。エドヴァルドは初めこそ驚きを隠せなかったが、次第に落ち着いたように静かに話しを聞いてくれた。彼は協力を約束し、直ちに部隊に招集をかけたいと、弟のジルヴェスターと仲間と共に部屋を出て行く。


私と莉亞も部屋を出て、食事までの時間を集会所の屋上で過ごす。


「見て、莉亞。この綺麗な夜空。」夏のさわやかな青い風が、頬を優しく伝っていくのを感じながら夜空を見上げ、両手を伸ばす。


「莉亞、生きてるってすごいことだね。少し前までは自分が神遣士だなんて考えたことすらなかったし、自分という人間が、まさか5つの星に存在しているなんて思いもしなかった。それにまさか、自分に妹がいるなんてね!


 うーんあと…、自分の大切な家族を失うなんて思いたくもなかったし、兄妹のように信じていた人たちに裏切られるなんて想像すら出来なかった。そして、いつも一番近くにいてくれた人が突然いなくなるなんて…。


 以前の私だったら…。おそらく落ち込んで立ち直れなかったと思う。だって普通に考えたらおかしいじゃない?何の取柄もない、ごく普通の女子高生が神遣士だとかさ…。頭もおかしくなるよ。


 でもね、そうならない自分がここにいるんだ。神遣士としての使命感が芽生えたのかな?とか考えたりもしたけれど…、私ってば、そんな柄じゃないし。まぁ、ないわけでは…、もちろんないよ。ある程度はある。でもそれが全部っていうわけじゃなくて…。」


「凱の存在?」莉亞は澄んだ目でまっすぐに私を見る。


私はそんな莉亞の頭を撫でながら笑顔で、


「うん、それはもちろんだけどね…。たくさん出会ったんだ。素敵な人たちに…。ほんとにたくさんの人たちに…。その人達はみんな、私に力をくれる。今までの自分だったら諦めてたと思うことも、今は自然にやってみよう、やらなくちゃって思える。みんなの優しさが私を強くしてくれる。


 莉亞はもちろんその中の1人だよ。大切な人。その人たちを守るためなら、私なんでも出来る。」莉亞は、私の言葉に瞳を潤ませて、


「莉羽…、大好き。莉羽が私のお姉ちゃんで…、本当に良かった。すごく嬉しいよ。」


そう言って私に抱きついてくる。


私もそんな莉亞を愛おしく抱きしめる。



『莉亞の出生の秘密と、国王と王兵団団長の不可解な行動を解明しないと…。きっとすべては一つの線で繋がっているはず…。凱の行方も…、その先に答えがあるに違いない』

私たちはその後、村長主催の宴に参加し、新たな仲間との出会いを果たすことになる。

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