【第9夜⑬ ~禁足地と国王~】
「どういうことですか?村長。」エドヴァルドが信じられないという表情で、村長を問い詰める。
「それは16年前のこと。先日の地割れと同じ場所に、やはり広範囲で地割れが起きたのじゃよ。」
「え?村長。私が知り得る限り、あの場所に地割れはなかったはずですが…。」エドヴァルドは顔を引きつらせながら話す。
「そうなんじゃ…、不思議なんじゃよ…。その地割れから半年後、その地割れはまるでなかったかのように、完全に元に戻っていたんじゃ。それを知るのはこの村でもほぼいない。」
「なぜです?」
「実はあの地域はいつからか「禁足地」となっておって…、その地域の警備兵のみ立ち入りを許されておったのじゃ…。それ故、その事実を知っているのは、その当時の警備兵5人とわし、あとは国家王兵団団長のみだ。」
「禁足地?ですか…。怪しいですね…。村にこんなに近い場所で…。」
「わしにもそれは分からぬのじゃ。分かるのは、国王の命と言うことだけ。そして、その地割れの件を周りに広めた警備兵5人全員とその話を聞いた者たちが不審な死を遂げていることから、それ以降、誰もその地割れについて話すことはなくなったんじゃ。」
「不審な死?」
「わしも分からぬ。それには国王直属の部隊数人が動いたという話じゃ。」
「不審な点が多いですね…。国王は何かを隠しているのでしょうか…。もし、本当に国王が絡んでいるとしたら…、なぜ以前の地割れを隠す必要があったのか?その警備兵の死も何か関連があるのだとしたら、国王の目的は何だったのか…?」エドヴァルドは眉をひそめて話す。
「まあ、聞きなさい。その話には続きがあるんじゃよ。その地割れの直後、この村の時計塔の入り口に赤子と真紅の石が現れたんじゃ。たまたま通りかかったわしが抱き上げると、その子はにこっと笑ってのう…。瞳もその石と同じ真紅で、それは、それは美しい…、まさにお2人の瞳と髪の色と同じ色じゃった。
わしは、その、どこからともなく現れた赤子と石を、一先ずわしの家で預かることにした。
するとその日の昼過ぎ、王兵団の団長が、突然わしの家を訪れた。地割れの件もまだ報告に出してさえいないというのに、団長は地割れの件、赤子の件を知っていた。わしは驚き、なぜ知っているのかと聞くと、全て国王の御力によるものと言われた。そして国王の命だと、その赤子と石を持っていくと…。
その石は少し欠けていたんじゃが、その石のかけらはこの村で大切に扱うように言い残し、団長は王宮に帰って行かれた。それから、その石を村の聖堂におくようにしたんじゃが、それから不思議なことが起き始めたのじゃ…。」




