【第9夜⑨ ~地割れ発生地~】
地割れ発生地は村の集会所からほど近い、カランドリアの栽培地の中に突如現れた。急な上り坂の途中のため、勢いをつけて上っていくと地割れがあることに気づかず落下してしまうだろう。実際、数人が吸い込まれるようにして…、命を落としたらしい。
「姫様、お気を付けください。ここも地割れから数m離れているとはいえ、いつ崩落するかわかりませぬ。」地割れ当日から、この付近を調査している師団兵が話しかける。
「先ほどから何度も危険だと言われてここまで来ましたが、どうしてもこの先を見てみたいのです。エドヴァルド、お願いします。」
私は凱の事を考えると、その地割れの先がどのようになっているのか確認せずにはいられなかった。私の懇願する表情に少し戸惑うものの、エドヴァルドは、
「姫様の思いは伝わってはおりますが…、大規模な地割れ当日から、少しずつ崩落の場所が広がっているのです。命綱をきつく巻くことをお許しください。そして時間も3分までとさせていただきます。姫様にもしものことがあったら…。」
「分かりました。ありがとう。私もここで死ぬわけにはいかないので…。しっかり結び付けてくださいね。」
魔法とか能力を使えば大丈夫なんだけど…と思いながらも笑顔でそう言って馬を下り、ロープを体に巻き付ける。
そして一歩一歩その地割れに近づいていく。その間、後ろから、
「まさか姫様とあろうお方が、こんな危険な場所まで見たいと言われるなんて…。」
「未知の力をお持ちだとは聞いているが、こんな場所までお連れして大丈夫なのか?」
「しかし、言っても聞く感じじゃなかったぞ。何があっても見たいって感じで、師団長も困り果てた様子だった。」
ひそひそ話しているつもりなのだろうが、地獄耳の私には、団員たちの声が全て聞こえてくる。
しかし、私はそんなのお構いなしに進んでいく。




