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【第9夜⑤ ~命の重みに違いはない~】

 集会所に着くと、奥の方に白髪の老人が座っているのが見える。その老人は私たちが入ってきた気配に気づいたのか、付き添いの者の手を借りてゆっくりと立ち上がる。


「姫様でいらっしゃいますか?」老人は辺りを見回すようにして声をかける。すると師団長が静かに、


「村長は視力が落ち、盲目状態にあります。」そう耳打ちしてくる。


「そうですか…。分かりました。」私はそう言うと、村長の傍まで歩み寄り、手を取って、


「そうです。村長。私はファータ国、王女の莉羽でございます。どうぞお座りになってください。」と言いながら村長が座るのを支える。すると、私の姫らしからぬ行動にお付きの者が焦ったように、


「姫様こそ、あちらにお座り下さい。申し訳ございません。」と深々と頭を下げる。


そのやり取りに、自分が座る際の補助に、あろうことかこの国の王女につかせてしまったことに気づいた村長が、顔を引きつらせながら、


「まさか、姫様にそのような事をさせてしまったなど…。何ということを…。」周りの動揺ぶりに私自身も驚き、しかしここは収束させねばと、


「落ち着いてください。私は人として普通の行動を取ったまでです。村長のお手伝いをしたい、そう思っただけです。ですから、もうそのようにおっしゃるのはやめてください。お願いしますね。」にこっと笑って言うと、村の者たちは顔を見合わせ、少し困惑の表情を見せるが、私は笑顔で続ける。


「私が王女だからと言って、こういう対応をしてはならないとか、させてはならないとか、そういうのは違うと思っています。私もここにいる皆さんも同じ人間です。命の重みに違いはありません。ですから、私がここにいる間、出来る限りでいいですから、特別扱いはやめてほしいです。」


 一人一人の顔を見ながら話す私の様子に、師団長エドヴァルドは初め、驚いたような顔で私を見ていたが、次第に口角を上げ、私が席に着くころには優しくほほ笑み、そして、


「姫様。あなたは私たちの想像をはるかに超えるお方です。姫様にとってはこの一件がとるに足らないことだとしても、私たちこの村の民にとっては大きな事件です。この話は、数日中に国中を駆け巡り、姫様の求心力はより強固なものとなる。そしてその力は、国力となります。民はあなた様の虜となるでしょう。」エドヴァルドのべた褒めに、私は照れながらも、


「私はどんな力を得ようとも、国民に寄り添う王女でありたいと思います。王族は、あらゆる面で民の力により支えられ、守られています。私はそんな皆さんに常に感謝の気持ちを伝えたいと思っていますが、それもままならない。ですから民が危機に面している今、私たちは命を懸けて皆さんを護りたい…。そう思っています。」私の言葉に涙さえ流すものも現れる。


「おお、神は何と素晴らしい王女を我が国にお与えくださったのでしょう。」

「ファータ以外の国々では、王制により虐げられている者も、数多くいると聞く。姫様を求める声は、おそらく近い将来、この星を1つにするかもしれない。」

「私たちファータの民は、本当に幸せだ。」

「おお、そうだ!これでエルフィー皇子が戻られたら、この星は無敵だ!」

「そうだ、そうだ!」団員をはじめ、村の人々は、口々に声を上げる。


 私は、歓声にあふれた集会所内の人々を改めて見回し、そして微笑む。すると、莉亞が近づいてきて、


「莉羽も私に負けず劣らずの二重人格炸裂してるわね。いつもの自信なさげな感じとは、まるで別人だわ!」ちょっとからかうような笑顔で話しかける。私はドキッとして、


『こらこら、大声で言わない。ここは、村人の士気を上げて行かないと!って、場面でしょ?王女としての役割を演じるのも、大切な事なの!』」と怒った顔で莉亞を見る。


莉亞は、怒った私をなだめるように、


『分かってるよ!皇子不在の今、莉羽しか村人の士気を上げられないもんね!いや、しかし、みんなに今のかっこいい、莉羽の演説を聞かせたかったなあ…。』


莉亞がにんまりと笑顔で返す。


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