【第9夜④ ~まさかのキャラ崩壊⁈~】
「お姉ちゃんたち、よそ者かい?この村に入るには、入村税1000ガルス支払ってくれねえとなぁ…。」突然ガラの悪そうな男が声をかけてくる。
そう言った男の後ろには、その男と同じように見るからにワルそうな男たちが10人ほどが控えているのが見える。私はこの状況に、
『莉亞はこんな野蛮な奴らにあったことはないはず…、きっと怯えているに違いない…』
そう思い、莉亞に自分の後ろに下がってもらおうと振り返る。すると…、
「何か用?」相手を威嚇するような鋭い目つきで男たちの前に出て腕を組み、仁王立ちの莉亞が啖呵を切る。
「へっ?」私は驚きのあまり無意識に声を漏らしていた。
「お前ら、そんな有りもしない話を持ち掛けて、悪どい商売なんかしてんじゃねぇよ。何ともさもしい奴らだな…。女だと思ってなめてんのか?」莉亞はそう言いながら、一番前にいる男の胸倉を掴む。
「へっ?」私はまたもや声を漏らす。
「なんだ、この姉ちゃん。可愛い顔で良い体してるな~と思ったけど…超やべぇ奴じゃん。お前たち、とっととこのくそ女黙らせろ。」リーダー格の男がそう言い放つと、
「おお~。」男たちが一斉に莉亞に殴りかかってくる。
「莉亞!」
私は男たちの攻撃を避けながら、この場から逃げるために莉亞の手を掴もうとするが、莉亞は普通にそこら辺に落ちていた木の棒を使って応戦している。しかも身長が2m近くあるであろう大男を、一発で戦闘不能にする光景を目の当たりにした私は…、「心配御無用」と判断し、軽やかな動きで宙に舞い、その輩のリーダーと思われる男をロープで縛り上げる。
「そこまでよ。観念しなさい。」
私はリーダーを縛り上げたロープを、よりきつく締めあげながら言う。
「うっ、うう~。」リーダーと思われる男は苦しさで声を出すことが出来ずにいる。
すると遠くから蹄の音が聞こえ、私たちの前に1人の青年が現れた。その姿を見た男たちは、
「こいつ…、師団長じゃないか?」
「やばい、逃げろ。」
そう言って慌てふためきながら、その場から逃れようとするが、遅れて到着した師団長と呼ばれる者の部下たちによって1人残らず捕らえられたのだった。
「莉羽様でいらっしゃいますよね?遅れまして大変申し訳ございません。お怪我はありませんか?私はこの辺りの村の師団長を務めておりますエドヴァルドと申します。」師団長エドヴァルドが、戦闘を終えた私たちを気づかう。
「大丈夫です。来ていただいてありがとうございます。まさか村の中心部でこのようなことが起きるとは思わず、油断していました。皆さんには心から感謝いたします。」私はそう言って駆け付けた団員一人一人の顔を見てから頭を下げる。すると慌てて、
「姫様!私たちなどに頭を下げるなど、そのような恐れ多いこと…。」そう言って団員たちは、私に頭を上げるように促す。私は師団長に、
「感謝の気持ちは、ちゃんと態度であらわさないと…。伝わらないでしょ?」にこっと笑いかけると、師団長はなぜか顔の熱が上がるような気がしていた。
その後、エドヴァルドを先頭に村長の待つ集会所に向かう私たち。私はその道すがら、
「莉亞?さっきのは、素?全くの別人みたいになってたけど…。」
私は莉亞の顔を恐る恐る伺うようにして話しかけると、そんな私とは正反対に、冷静に顔色1つ変えずに返答する莉亞。
「ああやって、女は弱いって…、はじめっから決めつけて、そういうのを前面に出してきたり、都合のいいように使ってやろうとか、いやらしい目で見る男どもが、昔っから大っ嫌いなの。見てるだけでも反吐が出る。しかもこの村に入ってから、なんとも言えない違和感を…。何かを感じるんだけど、それが何かわからなくて、すっきりしなくてね…。そんなこともあって虫の居所が悪いわけ。ああいう輩は、ぶっ飛ばしてやりたくなる。そんなところかしら…。」私は莉亞の豹変ぶりに驚きを隠せず、おそらく顔をひきつらせたまま、
「ああ、そうなんだ…。なんだか今日の莉亞…、新鮮だなぁ…。その姿を見れて…、良かったというかなんというか…。あはは。」と、苦笑いしている意味が、当の本人には分からないようだった。
終いには、
「エドヴァルドさんが来なければ、私が成敗してくれたのに…。ああむしゃくしゃしてるし、全員ぐるぐる巻きにしてやりたかった…。」という言葉が私の耳の入ってくる。
それに思わずククッと笑った私は、
『莉亞は二重人格…?しかも自覚なしなら…、怒らせるとマジで怖いかも…。でもウケる。あんなにおしとやかな雰囲気全開なのに、人って見かけによらないな…』
そんな莉亞に私はさらに親近感を抱き、心の中の爆笑を押さえるのに必死だった…とは本人には死んでも言えないなとまた笑う。




