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【第9夜③ ~ファータの実情~】

 その村は、王宮から北に馬を走らせ丸1日ほどかかる、ファータ最北の地にある。沈まぬ太光星(※)の恩恵を1年の半分ほど受けるこの大地では、カランドリア栽培により村民の50%が生計を立てている。

 カランドリアとは、陽の光を浴びれば1日で収穫できる万能栄養食品で、乾燥させても保存が効くため、この星では最も重宝されている食べ物である。しかし、生で食べる分にはさほど影響がないのだが、乾燥させる際、発生する気体の比重が重く地面一帯を覆うのでその気体で覆われた土地は、それ以上作物が育たない。また、その気体は土壌に溶け込む性質もあり、土壌の性質を悪化させることが近年分かってきた。


 しかし、それでもその土地の権力者たちは自分たちの利益を優先し、競って未開拓の土地を開拓していた。ここ最近では、異能の力で陽の光をさほど必要としない品種が作り出された事から、ファータ全土の行政の手が行き届いていない未開拓の地での栽培が広がり、その裏で権力者達の利権争いが絡んだ殺人事件なども起きている。ここ最近、その情報を入手し、調査に乗りだした各地方の王兵団だったが、土地の荒廃は進み、環境は悪化、殺人が横行するなど、そう簡単に解決できる状況ではないことがようやく分かってきた状況だ。

 さらにファータ全土で、比較的強い異能の力を保持する者がその力で財を成し、力なき者との貧富の差が顕著になり、貧困層による救済を求める声も多く聞かれるような現状であった。


 このような状況だからこそエルフィー皇子と私の結婚は、変革を求める民にとって希望の光だった。若い2人が、強大な力でこの国を変えてくれるはずだ。そんな期待があるからこそ、あんなにも多くの人々が式に参列し祝ってくれたのだろう。私はその後、王兵団から今まで知る事の無かった様々な国の実情の報告を受け、様々な事実を知る事となる。


 しかし実もっと奥深いところで、人々の心を蝕むもっと大きな問題が潜んでいることを、この時の私はまだ知ることはなかった。


※※※


 私たちはそのカランドリア栽培地帯を延々と8時間、まるで同じ道を何度も通っているかのような錯覚を受けながら走り続け、ようやくその村の中心部にたどり着く。


 地割れによる壊滅的被害を受けているに違いないと考えていた私たちの予想に反して、その村は何事もなかったかのような通常営業で、多くの人々が村で一番栄えていそうな市場付近を行き交ってる。そこを進んでいくと、1人の男が近寄り声をかけてくる。


※太光星~ファータで言う太陽の事

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