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【第8夜① ~「大丈夫」~】

それと時を同じくして、私はアースフィアで消えた凱を探すため、凱の気配が消えた駅前の地割れの現場に来ていた。そこで何度も何度も心層に呼びかけるが、答えはない。途方にくれ、家に帰ってきた私は、それから何日も眠れない夜を過ごした。


『凱、どこにいるの?お願いだから返事をして!生きてるよね?生きてるなら…、声を聞かせてよ…。』


真っ暗な部屋で私はうなだれながら、力なく呟く。


「ねえ、凱…。ついこの前、私に言ったよね?


『俺はお前のバートラル。どんなことがあっても、いなくなったりしない』って。

あれは嘘だったの?どこをどうやって探しても、あなたを感じられなくて…、もう私も…力が…。

ねえ、凱。私はどうすればいい?ねえ、凱…。」

 

 このまま捜索に何の進展もなければ、凱をあきらめざるを得ない。しかし、そんなことが私に出来るはずがない。この先どうしたらいいんだろう…と1人悲しみに暮れ、窓から見える夜空を眺めていると、莉亞が部屋に入ってくる。


「眠れないよね…、凱のこと考えたら…。」莉亞は隣に座り、同じように空を眺める。


「でも凱はずっと言ってくれてたんでしょ。莉羽を必ず守るって。どんな時も…。

少なくとも、私が莉羽と出会ってから、その言葉を聞かない日はないくらいに…。莉羽にその思いを植え付けるように、何度も何度も言ってた…。だから、その言葉を信じるしかない。信じよう、凱を…。」


莉亞の言葉で、私の頭の中に今までの凱とのやり取りがフラッシュバックされる。


 それは夢を見る前から…始まっていた。私が何をするにも、必ず【大丈夫】。

【安心しろ、俺がいる】と言っては、いつも一緒に考え行動してくれていた。


自分の記憶に気付かされる私。


『そうだ。凱はいつも、どんな時も私を守るって言ってくれた。だから、必ず生きている。そう信じなきゃ。』私は顔を上げる。そして、


「ありがとう。莉亞…。」泣きながら抱きしめる。すると、莉亞も私を抱きしめ、


「莉羽。私もね、皇子がいなくなった時同じ気持ちだった。皇子は必ず生きていて、ここに戻って来るって思いながらも…、不安で、不安で…。でも、莉羽や凱、そしてお母さんが私のそばにいて、「皇子は大丈夫、必ず連れ戻す」って言ってくれて…、だから信じてる。

それに、ファータの…あれだけの人々が彼の帰りを待っているんだもの…。だから、彼は帰って来ないといけない!ねっ!だから、莉羽も望みを捨てないで。凱の帰りを待とう。」


私はその言葉に胸がいっぱいになる。


「いつもそばにいるのが当たり前だったから…、いなくなった途端、不安に押し潰されそうになってた。そう…、いつも言ってくれた。守るって。だから信じるしかないよね!ありがとう、莉亞!」


私は改めて莉亞を抱きしめる。


「痛い、痛いよ、莉羽。」莉亞は少し照れ笑いをしながら、


「でね、私、考えたんだけど…。」莉亞が何かを思いついたようだったが、


「やっぱり、今日は寝よう!明日から大変だよ!莉羽。じゃあ、今日はゆっくりお休み。」


笑顔でドアを閉め部屋を出る莉亞。


その夜私は、莉亞のおかげでぐっすり眠ることができた。



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