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【第7夜 ~あなたは私のもの~】

 そのころメルゼブルクでは、国王ハラール2世に重大な病気がみつかり、余命わずかということがわかる。ただでさえ、第2皇子の処刑騒動があり、王室には想像を超える不信感が向けられ、それに拍車をかけるように、第1皇子であるクラウディスも近衛兵を引き連れて姿を消したような状況だった。


 ハラール2世は、クラウディス自身、自らの王たる資質の欠如と全魔導書の未解読による責任を感じ、次期国王の資格を放棄したのではないかと考えていたが、事はそんな次元で片づけられるほど、単純明快ではなかった。


 しかし、自分の考えに疑念の余地すら感じていない国王は、自分の寝室に凱を呼び出し、


「このまま私が死ねば、この国は王不在となり国が荒廃する。クラウディスの進言を鵜呑みにし、そなたを魔導書盗難の犯人と決めつけ、その命を奪おうとしたこと…。どうか、どうか許してくれ…。

 こんなことがなければ…、お前を真っ先に次期国王としていたものを…。クラウディスの婚約者の莉羽の所在も分からぬ今、お前はその妹、莉奈と婚姻を結んでこの国の王となり、この国を護ってくれ。」


ベッドに横たわる哀れな王は、凱に懇願する。


「何を言っているのです。事はもうこの国の問題だけでは済まないのです。それに莉羽は…、生きています。そして、この国を護れるのは…。うっ。」話の途中で突然、凱がその場に倒れる。


それをあざ笑うように部屋に入ってきた莉奈が凱を見下ろして、


「今、この瞬間を以って、あなたは私の物。莉羽ったら、死ぬほど嫉妬するでしょうね。ふふふふふ。」


莉奈は視線を国王に向け、

「先ほどのお話、謹んでお受けいたします、国王。」


王を見下ろしながら、ドレスの両端を上げ、ニヤッと笑ってお辞儀をする。その目は、自らの企みの成功を確信する、狂気の光が渦巻いていた。


「うむ。頼んだぞ。ところで…、凱はどうしたのだ?倒れたままだが…。」ベッドに横たわっているため、倒れた凱の姿が見えない王に、


「わたくしが部屋で介抱いたしますので、ご安心ください。衛兵、凱様をわたくしの部屋まで運んで。」


「はっ。」


「では、またこちらに参ります。式の日取り等の打ち合わせなど…、早急に進めたほうがよろしいですよね?」


「ああ、そうだな。私も生い先短い。頼んだぞ、莉奈。」


「はい。」そう言うと、莉奈は王の間を出て、


「凱様を連れて先に戻っていて。」


そう衛兵に告げると、自分は自室に向かう廊下の途中に立ち止まり、


「事は上手く運んでおります。私はこのままこちらで準備を進めますので。…。はい、心得ております。では。」


そう言うと足早に自室に向かう。


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