【第6夜⑥ ~記憶喪失の謎~】
あれほど緊張していた私たちだったが、結局莉奈が何事もなかったかのように凱と2人で出かけたことで、肩透かしを食らったような気持ちになる。
それからしばらくして、出かけたはずの凱の声が聞える。
『莉羽、心配するな。傍にいなくてもお前の声は聞こえる。何かあったらすぐ知らせてくれ』
『うん。わかった…』莉奈と出かけたことに、ちょっと…、いや、だいぶイライラしながらも、今はそんな場合じゃないと、そう答えた後、母と莉亞と3人でナータンについて話す。
「お母さんからこの星域の話を聞いてから、5つ目の星の夢を見ないなってずっと思っていたんだけど…、まさか、あんな状態だったなんて…。あの荒廃した大地は…、回生をもってしても大地を浄化できなかったって事なのかな?」私がナータンの異様な光景を思い出して話すと、
「回生前に何が起きたんだろう。それとも回生後?あんな状態じゃ…、人は住めないよね…。」莉亞も続ける。
「それと…、人のエネルギーを使って世界を作り変えるって言ってたけど、どうやって作り変えるというのかしらね…。」母は自分が父に投げかけ、はぐらかされた、結局分からずじまいの疑問について話す。
「そう、確かにそれの意味が分からない。お父さん、説明下手だよね…。」私が自分の父親ながら残念だなと思って言うと、
「多分、洗脳されてると思うから…。」母もあれが自分の旦那だと思いたくないのだろう、ほんとかどうか…洗脳のせいにする。
「あと…、拉致した人って、みんな記憶をなくして帰ってくるけど…、やっぱりエネルギーと一緒に記憶も抜かれてるってことなのかな?」莉亞が言う。
「そうだよね。エネルギーは新世界創造の為として…、じゃあ、記憶喪失は?ってことだよね?」
「うん…。じゃあさ、記憶も吸い取られているとして…、人の記憶に何があるっていうんだろうね…。」私は頭を働かせるが、やっぱりわからない。
「人からエネルギーを抜いたら、抜け殻みたいになりそうだけど…。記憶を吸い取る…ってことは、過去の情報を得たいわけだから…昔の記憶…。ん?もしかしたら、はるか昔の記憶を持っている人を探している?今は、莉羽が神遣士、凱がバートラルであることは向こうも把握していることだけど、例えば、回生以前の世界の状況を知っている人とか…、過去に能力者だった人とか…。」
母がまだ完全に思い出せていない自分の記憶をたどりながら、可能性が少しでもあるものを拾っていく。
「あっ。そういえば…。」




