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【第6夜③ ~廃星ナータン~】


 莉奈も含め、私たち5人は見知らぬ土地で目覚める。


「ここはわが神により完全に支配されている第4の星、廃星ナータンだ。」父が口を手で押さえながら言う。


「ここが?」私たちは、母から話に聞いていたナータンの姿を見て驚愕する。


 そこは荒廃した大地が広がり、草や木などの緑は一切見当たらず、見渡す限り赤土の大地。上空一帯、黒雲が低く垂れ込め、その中を稲光が走っている。空気は淀み、ヘドロのような鼻をつく臭いが充満し、ガスマスクのようなものがない限り長時間その場にいることはまず不可能だろう。


「ここに本当に人が住んでいたの?」誰もがまずそう感じるほど人の住める環境にはない状況に、この星に何があったのか考えるだけでぞっとする。


 あまりのショックに呆然としている皆の、そのはるか向こうから土埃が舞い、よく見ると、そこには拉致されたであろう多くの人々の姿があった。何千、いや何万という人々が列をなし、その先には死んでいるのか、眠らされているのか、数えきれない人々が横たわっている。


「あんなにもたくさんの人が…。」私はそのすさまじい様子に息をのむ。


「風貌からしても、全ての星で拉致された人たちが、ここに集められているみたいね…。それにしても、ものすごい人数…。あり得ない…。」母はショックのあまり、今にも泣きそうな顔で、その光景を見つめる。私たちがこの光景に戸惑いと焦りを感じていると、


「驚いたかな?ここナータンは各星で拉致した人間を集め、神の石の適合者を探す星だ。私たちが神の御心の元で、何をしているのか説明してやろう。そして、お前たちがどう選択するか…で、世界の未来は変わる。」父はそう言って静かに話し始める。


「人々の生命力、創造力、決断力、実行力、人間が何かを起こそう、生み出そうとする精神エネルギーは偉大だ。そのエネルギーは、世界中のあらゆるエネルギー源よりも尊く、美しい。わが神はその力を使って、愚かな人間の住むこの世界を作り替えようとしている。」


「世界を作り替えるって…。人間のエネルギーで、どうやって作り替えるというの?」母は訳の分からない話にやきもきしている。


「まあ、そう焦るな。じっくり話してやる。」そう言い、続ける。


「お前たちも望んでいるのだろう?争いのない、真の幸福の世界。それをわが神の先導の元、作り上げていくのだ。あそこに並んでいる者たちは、そのエネルギーを神に捧げるために並んでいる。お前たちも自分の力をわが神に捧げたくはないか?」そう言われた凱が、かまをかける。


「破壊神にか?」すると、


「そうそう破壊神様に…。」それまで饒舌に話していた父の顔が、一瞬にして豹変する。


何かに怯えるように、あたりをキョロキョロと見回していると、次第に顔に生気がなくなっていくのが見て取れる。


凱は、【馬鹿め】と心の中で呟き、父に気付かれない程度に口角を上げる。


一方の父は、破壊神の名を出してしまったことから命の危険を感じていた。おそらくこの状況は監視されており、先ほどのやり取りは筒抜けだろう。この失態に自分が粛清されはしないかと思い、脂汗で額は異様なほど光っている。父はこの状況をどう打破しようか思案しているのか、先ほどまでの饒舌ぶりが嘘のように、黙り込んでしまう。


私はその状況に、ふと先の方に目をやる。するとそこに馴染みの顔を見つける。





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