【第5夜⑰ ~新たな移動術~】
その後、莉亞の気持ちが落ち着いたのを確認すると、
「さあ、要件も済んだし、帰るとするか…。で、今までと違う方法で戻ってみようかと…。俺たちの力も上がったことだし、この前にみたいな一か八かの念じるって奴じゃなくて魔法で。で、どうやるんだっけ?莉羽。魔導書にそんな魔法があったの、覚えてるか?」凱は私を試すように聞く。
「はいはい、凱先生。それはですね、17冊目の魔導書、ページは782頁に記載されております。って、からかうのもいい加減にしてよ!」私は頬を膨らませて、怒ってますアピールをする。
凱はそんな私を見て、ふざけ過ぎたと苦笑いして、
「ハハハ。悪かった。しかし、ページまで覚えてるなんて、さすがの記憶力。御見それしました。」そう言う凱の表情に、心なしか安心の色も見える。私は、
「もう、ほんとにいつもからかわれっぱなし…。」と言ってから表情を一変させ、どや顔で続ける。
「でもね…、ちゃんとびっくりしてよ!きっと凱も思いつかない移動方法を、この莉羽さんが発見しました!」凱は、?と驚いて、
「ほんとか!」と声を上げる。私はニヤッと笑って、
「うん。莉亞の力でね!」どや顔のまま言う。
「なんだよ。お前の力じゃないのかよ。」凱はプッと笑って、
「で、莉亞、会得したのか?やったな!それでどんな感じなんだ?」凱の興味津々な目がいつになく可愛い。
「うん。朝起きたら目の前に白い光が現れて、その向こうに莉羽の部屋が見えたの。それで、手を伸ばしたら…、莉羽の部屋に吸い込まれそうになって…。」
「気づいた私が慌てて引っ張って、引き戻したの。」
「それは意識してやったのか?」凱の質問に、
「その後、自分で目的地を決めてやってみたけど出来なくて…。自分の力だけじゃダメって事が分かって、莉羽に相談したの。」莉亞が答える。
「で、莉亞が吸い込まれそうになった時、私がアースフィアに帰らなきゃなぁって考えてたから、私が目的地設定するって言って、2人で試したら…、出来たの!移動の媒体を莉亞が作って、目的地の設定は私がやるって感じ。ん~簡単に言うと…、私が目的地を指定して、莉亞が移動トンネルを作る。意味分かる?」私が凱の表情を確認すると、
「要は、お前がここに行きたいと行った場所への道を、莉亞が作ってくれるって、そんな感じだろ?」
「そう、それそれ!さすが凱!理解が速い!」私が笑って言うと、凱も笑って私の頭にこつんと拳を当てる。
そんな私たちを見ながら微笑んでいる莉亞が、
「泉の力で魔力が上がって、莉羽の力をスムーズに受け入れられるようになったんだと思う。でも、出来て数人単位の移動しか…まだ私には出来ないみたい…。」莉亞は謙遜しながら話すが、私はすごいことだなと感心している。
「でもすごいな。今までは正直、一か八か的な移動だったけれど、これでピンポイントに行きたい場所に移動できるようになる。」
凱は珍しくワクワクしているようだ。そんな凱に、
「ねえ、そういう、凱も何か新しい力、身に付けたよね?」私は尋ねる。
「あっ、ああ。まだ内緒。」
「ええ~。教えてよ~、ずるいじゃん。さっきの木の上の件だって、後でって、何なの?」
「いいだろ。そのうち見せるから。」
「まあ…、隠し事しても心層解放してる時に、頭の中全部のぞけるけどね~。」笑う私。
「うわっ。そうだった。」凱はわざとらしく笑う。
「へへん!変なこと考えたら、一発で分かるから気をつけなさいよ~。泉に入って力が増した私を侮ってもらっては困ります!」
「ハハハ。泉なんか行かなければよかった。」凱が冗談半分で言うと3人で大笑い。
それぞれ、久々に心から笑ったようなそんな気がしていた。
「じゃあ、帰るか。莉亞、よろしく!莉羽、目的地は?」
「アースフィア!」
「了解!」
私たちは光の中に消える。




