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【第5夜⑯ ~トラウマ~】


 私たちはアーロたちに別れを告げ、凱に続いて馬を走らせる。


「ところで凱。私たちどこに向かってるの?」私が不思議そうに聞くと凱は、


「この前、ここでやり残したこと…、というか置いてきたものがあるんだ。」


「え?何?」私には何のことかさっぱり分からない。


「まあ、とりあえず行こう。」そう言って凱は先を急ぐ。


「ちょっと、待ってよ!凱。」私と莉亞は凱を追い、かなりの時間馬を走らせることになる。


※※※


「あれ?凱?」突然姿を消した凱を探す私と莉亞は、顔を見合わせる。


「凱は?莉亞どこに行ったか見えた?」


「ううん、見えなかった。消えた…、の?」莉亞は不安げな顔で言う。


私も少し不安になって、莉亞の手を握ってあたりを見回す。


「凱、どこ?凱?」不安で震える声。


すると、頭上から目の前に人がさっと下りてくる。


「え?凱?なんで?」その人は紛れもない凱だった。


「どうした?2人とも…。そんな 青い顔して…。」凱は私たちの様子に驚く。


「だって、さっきまで目の前にいた凱がいなくなるんだもの。焦るじゃん。どこに行ってたの?」私は興奮のあまり一気に真っ赤になった顔で、凱の服を掴みながら問いただす。


「おいおい、そんなに怒るなよ。俺はあそこに行ったの。」そう言って、凱は目の前の太い木の上を指さす。


「木の上?」


「ああ、そう。ちょっとあそこに置いてきたものがあってな。」


「何?」


「まあそれは、アースフィアに帰ってからにしよう。おい、莉亞。大丈夫か?」


目の前でエルフィー皇子が消えたことがトラウマになっているようで、まだ震えが収まっていない。


私は莉亞を抱きしめ、

「大丈夫、凱は戻ってきた。莉亞、エルフィー皇子も戻ってくる。ねっ。」そう言うと下を向いていた莉亞は、ゆっくりと顔を上げ、


「突然いなくならないで、凱。」とボソッと言う。


「そんなつもりはなかったんだけど…、ごめん。」凱は申し訳なさそうに言う。


「凱、突然いなくなるとか、ほんとに無しだよ!そうなったら私、1人じゃ戦えない…。」私は念を押す。


「あ~、はいはい。分かってるよ。俺はお前のバートラル。どんなことがあってもいなくなったりしないよ。」


「約束です!凱。」莉亞は凱に釘をさす。


「ああ、分かってる…。」


ちょっと木に登っただけで、まさかここまで言われるとは思わなかった凱。でも、愛する人や身近な人が、突然いなくなる事の精神的ショックがどれだけ大きいものなのか、身をもって感じていた。


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