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【第5夜⑭ ~老人の警告~】【~懐かしき場所~】

 聖なる泉を後にし、ヴァイマールに戻る私たち。


まだ見ぬ真の敵との戦いに、気持ちを新たにした私たちではあったが、今回ミディアを失ったショックはどうやっても拭えなかった。何とか明るく振る舞おうとしても、気付くとミディアの事を考え、そして気持ちが落ちていく。その繰り返しだった。皆、ミディアが無事であることを願う事しか出来ない自分たちに不甲斐なさを感じていた。


 それでも踏ん張って、みんなで前を向いていこうと、今回聖なる泉で得たものをお互い確認し合うことで、気持ちを上げようと努力はしていた。今、自分たちにできる事を…と、ただそれだけで動いていた。


 そんな私も、笑顔だけは絶やさぬようと心がけているものの、気持ちの乱高下を繰り返していた。神遣士という立場でありながら何もできなかった自分に、情けなさと不安を感じ、何度も逃げ出したくなっていた。でも、


『このままじゃ、何も変わらないし、何も変えられない。自分に負けちゃだめだ。ここで踏ん張ろう!これはきっと神様からの試練だ!この試練に打ち勝った先に、新しい未来が待っている』


そう思って何とか自分の気持ちを持ち上げる。そして、今後も良い導きがいただけるようにと聖なる泉の方を見て、いつもより長い祈りを捧げる。すると、


【コンコン】ノックが聞こえ、双子の祖父が入ってくる。


案の定、彼は激怒していた。


「孫はどうしたのだ?まさか、拉致されたなんてことはないだろうな?孫を返せ…。わしは前回、孫に何かあったらただで済むと思うなと言ったはずだ…。」


怒りを抑えるように話してはいるものの、老人から感じる負のオーラが部屋中に漂い、私を取り込もうとしている。私は恐怖で体を動かすことが出来ない。


祖父は続ける。

「いや、孫の件だけではない。わしは幾度も警告していたはずだ…。無駄な戦いにより、たくさんの者が死に、お前自身も大切なものを失うと…。」


私はその言葉にハッと思い出す。夢の中に何度も出てきては、私にこの戦いから手を引くように脅迫してきたあの老人…。私がこの戦いに向かうことで世界の崩壊を招き、多くの人が死ぬと確かに警告してきた、あの老人だった。私の額から汗がにじみ出る。彼の放つオーラに心が押しつぶされそうになっていると、彼はとどめの言葉を放つ。


「お前の最大の罪は…、この国、この星全ての災厄の引き金を引いたことだ…。世界は崩壊へと向かう。全てお前のせいだ。世界が滅んだあと…、せいぜいその罪を抱えて生きていく事だ…。さらば、愚かな娘。」 


私はしばらく身動き一つできず、恐怖に飲み込まれそうになりながら、いつの間にか眠りに落ちた。


※※※


その夜、私は夢を見る。


 巨大神殿の奥深く、神殿内で最も神聖な場所である至聖所。


始めてくる場所だ。


でもなぜか…、懐かしい気もする。


初めて訪れたこの場所で、私は何をすべきか分かっている。


部屋の一番奥に飾ってある肖像画の前まで歩いていき、そして祈る。



「世界に恒久の平和あらんことを…。」



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