【第5夜⑦ ~見えない力の導き~】
泉の周りを、何か探して歩き始めた凱に、
「凱?どうしたの?」と言って、私はついていく。
凱が何を探そうとしているか、皆目見当がつかない。すると、
「この変だと思うんだけど…。」凱は念入りに調べ始める。
「ここに何があるの?」
「入り口。」
「入り口って何の?」
「聖なる祈りを捧げよ、されば聖なる力を…。」凱の口から言葉が漏れる。
「聖なる祈り?」私が聞いたことで、凱は自分が無意識に口に出していたことに気付き、
「今、俺、何か言った?」と聞き返してくる。そんな凱に私は不思議そうに、
「うん。聖なる祈りを…、って呪文みたいな言葉を言ってたよ。」と答えると、
「そうか…。ここに来たことで記憶が呼び戻されたのか。」凱は自分で納得しながら話すと、こっちを向いて、
「ここの入り口を開く言葉…。ここに来るまでずっと思い出せずにいたんだけど…。ここの魔力に誘引されたことと、アーロと握手したことで、俺の記憶が戻ったんだな。お前の記憶も、もしかしたら戻るかもしれない。」
「そうなんだね。アースフィアで、なぜか分からないけど、次はこの聖なる泉に来なくちゃって思ったんだ…。それは、ここの魔力の導きなのかな?何かを思い出しなさいっていう…。」
「その可能性もあるだろうな。」そう言って、再び入り口を探し始める凱。
「ここら辺のはずなんだけど…。この泉の底に入れる入り口があるはずなんだ。」
「そうなの?前に来た時はそんなこと何も言わなかったけど…。それもここに来て思い出したの?」
「ああ。千月さんと昔、ここに来た記憶を。」
「お母さんと?」
「ああ。でもここで何をしたかまでは思い出せないんだ…、でもすごく重要な…。」そう言うと、凱は何かに気付き、私の耳に手を伸ばす。私はその手に驚いて、
「えっ?何?」と言って慄くと凱が、
「あっ、悪い。こっちのピアスが光ってるんだ…。」
母にもらった蒼いピアスの右側だけが光っている。
「えっ?」
私は驚いてピアスを外してみると、ピアスは美しい真っ青の光を放ち、何かを指し示すかのように一点を照らし始めた。




