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【第5夜② ~父の連行~】


 ここメルゼブルクで強力な魔法を迂闊に使うと魔法痕が残るため、お尋ね者の私たちは瞬間移動のような高度な魔法は使えない。いくら凱が魔法痕の残らない魔法を編み出したとはいえ、まだ扱いに慣れていないので魔力の消費が激しいらしく、不測の事態に備えて私たちは馬で移動することにした。


 馬で走ること5時間。聖なる泉の村【ヴァイマール】に着いた私たちに気づいた双子の姉妹とアーロがわめきながら駆け寄ってきて、


「今までどこに行ってたんだよ…、莉羽。」とぼろぼろ涙を流しながら話し始める。


「どうしたの?」


「莉羽~。ほんとに怖かったんだよ~。第一皇子のクラウディス様が憲兵を連れて、莉羽姉ちゃんはどこにいるって、ものすごく怖い顔でやってきたんだよ…。」アーロに続けてリディアも、


「分からないって言ったら、怒鳴りつけて、代わりにお父さんを連れて行っちゃったんだよ…。お父さん…、何も悪いことしてないのに。わーん。わーん。」リディアはさっきよりも大声で泣き始める。


「ガージリフトさんを…?」驚く私。


「ねえ、ミディア。クラウディスがここに来たのはいつ?」


ミディアは泣いている顔を上げて、


「3日前かな…。」


「そうか…、それほど経ってないのね…。」


「どうする、凱?」少し考えて、


「ガージリフトさんって、確か物体移動の魔法でも、この国トップクラスだよな?」凱が確認を取る。


「うん、この前どんなに大きなものでも移動させられるって言ってた。」私は答える。すると、


「私もそんな大きなものを移動させるのは見たことないですけど…。」ガージリフトの妻マーガレットが説明を始める。


「以前聞いた話ですが、出先で落石事故に遭ったらしくて…。その時、けが人が多く出てしまって…、でも治癒魔法を使える人がいなかったから、主人がその人たち全員を移動魔法で病院まで転送させたって。馬だと一日半かかる距離をね、一瞬で。」マーガレットも不安そうな顔で私たちを見る。


「そうでしたか…。それはやっぱりすごい力ですね。」凱はそう答えると、視線を子供たちの方に移して、


「おそらく、父さんはひどいことをされたりはしていないはずだ。奴らは父さんの力を必要としているからね…。」凱は子供たちに優しく話す。


「ほんと?父さまは無事?」ミディアは涙をぬぐいながら聞く。


「あの人達の目的はまだ分からないけど、能力者を集めているのは確か。だから能力者である父さんを傷つけたりはしないはず。だから安心して。」私も凱に続く。


「わかった。莉羽、凱兄ちゃん!」子供たちは、目に涙をためて必死に泣くのを堪える。


「とりあえず、今から俺たちは聖なる泉に向かう。お前たちもついてくるか?」


「うん!」子供たちが答えた瞬間、私の中に電気が走ったような感覚を覚える。


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