【第5夜① ~聖なる泉へ・祈りの力~】
その夜、狙い通りメルゼブルクに飛んだ私たち。
クラウディスと国王により、魔導書盗難事件の犯人に仕立てられた凱とクラウディスの婚約者でありながら凱に加担した罪で指名手配されている私、そして夢の中にも入れるようになった莉亞は、ここで聖なる泉を目指す。
莉亞はメルゼブルクがお初なので、大まかな説明をする私たち。
「ここは、民がほぼ全員と言っても良い位、魔法を使える国『メルゼブルク』よ。莉亞にはここで回復魔法を使えるようになってもらえれば…と思ってるからよろしくね。」
「私に魔法を使える能力なんてあるのかな…?」不安そうな莉亞。
「私の妹だから、きっと使えるってお母さんが言ってたし、私もそう思うから不安を感じなくて大丈夫。もしもの時は私たちがいるじゃない?」にこっと笑いかける。何とか笑顔を取り戻した莉亞に、
「今は大まかな説明しか出来ないが、泉に向かいながら詳しいことは説明しようと思う。だからその時魔法の実践も…だな。おそらく道中、戦いは免れないだろうから、その覚悟だけはしておいてほしい。」凱は準備をしながら話す。
「でも私…。戦えない…。」莉亞はやっぱり不安を拭えない。
「大丈夫。莉亞に何かしてもらおうなんて思ってない。何かあったら、俺と莉羽がサポートするから心配するな。基本祈ればいい。」
「祈るって?」
「こうなってほしいって願うと、その思いが強ければ強いほどパワーを得られる。莉亞は私の妹だもの。大丈夫!」
「分かったような、分からないような…。だけどやってみる!」
「うん!」
「さっきから、お前、「私の妹」その一点張りだな。」凱は私の顔を見ながら笑っている。
「だってそう思うから…。もういいじゃない!からかうの禁止!」私は凱の方を見て頬を膨らませる。
その私たちのやり取りが、莉亞の心を和ませていたのは言うまでもない。




