【第4夜③ ~ルイーゼの生い立ち③~】
「聞いて驚くと思うけど…、ルイーゼさん、あなたは、私の娘、そして莉羽の双子の妹かもしれない。」
「…。」ルイーゼは目を見開いたまま動けない。私も凱も衝撃のあまり身じろぎも出来ない。
「おっ、お母さん?どういうこと?」ようやく言葉が出る。
「びっくりするわよね…?私自身もこんな事言っていて、驚いてるんだけど…。
今まで話したことがなかったのだけど…、実は莉羽を妊娠したとき、双子と診断されていたの。でもいざ出産のときに生まれたのは…、莉羽だけ。もちろん、出産直前の確認の時も異常はなかった。写真もあるわ。双子の女の子なんて嬉しくて、お父さんと楽しみにしていたの。でも…、【莉亞】と名付けようとした子は…、生まれてこなかった。先生もこんなこと初めてだって…。
その時はどうすることもできなかったけれど、私が力を取り戻し始めてから、それはもう血眼になって探したわ。場所は分からないけれど、どこかであなたを感じていた。神遣士だった当時の力を持っていれば、すぐに見つけられたんだろうけど…。でもそれ程の力は今の私にはもうない。だから、今の自分にできる限りの力であなたを探したの。手がかりだけでもって…。でもどうしても見つけられなかった。」そう話す母の目には涙が溢れている。
初めは驚いていたルイーゼだったが、思い当たる節があるのか、しばらくして口を開く。
「ファータの両親とは血のつながりがないことは知っています。でも、どういう流れで私が両親に育てられることになったのかまでは分からないです。」動揺しているルイーゼはいつもより口調が固い。
「そうなのね…。莉羽の心層を通しても、あなたのことは見えなかったから、全然わからなかったけれど、あなたの持つオーラが懐かしく感じるの…。家の結界に変化があったのも…、あなたの力が加わったから…。だからきっと…。」泣きながらルイーゼを抱きしめようと腕を伸ばす。
でもルイーゼは半信半疑で、母のその行為を受け止めきれないでいる。そんなルイーゼに、
「それはそうよね…。突然そんなこと言われても…、信じられないわよね…。」母は寂しそうに話すと突然何かを思いだしたように、
「あっ、そうだわ。ルイーゼさん、背中に三日月の形の痣はない?」今度は目を輝かせて尋ねる。
「あと…肩に2つ並んだほくろとか…?」と探り探り、聞く私。
「え?…確かにありますけど…。見たことないのにどうして…?」ルイーゼは目を丸くしていう。
「えっ?あるの?」私は嬉しさで声が上ずる。それを見た母も、喜びの笑みをたたえながら話し始める。
「背中の痣は、お腹の中の写真ではっきり写っていたの。ほくろは莉羽もあるから、もしかしてって思ったのよね?」
「そうそう!私のは右肩。双子だとそういうのあるっていうじゃない?」私が無邪気に言うと、
「お前の頭の中はいつも、おめでたいよな。」そう呆れた感じで言う凱。
「別にいいじゃない。ほんとにあったんだし…。ねっ、お母さん!でも、もし本当の姉妹でなくても、一緒に戦う仲間だし、もう姉妹みたいなものじゃない?」私は満面の笑みを母に向ける。
母は私の突拍子もない提案に驚きつつも、
「きっとそのうちはっきりすると思うし、莉羽がそう言うなら…、お母さんはルイーゼさんを莉亞だと思って接するわ。」そう言って母が莉亞の手を取ると、突然ルイーゼの目が光り出す。
その直後、私たちは心層に流れてきた映像にルイーゼが家族であることを確信する。




