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【第3夜⑩ ~融合による潜在能力解放~】

 私と凱、ルイーゼの力の融合で繰り出された攻撃を何とかかわしたロイは、そのまま私たちの張った結界外の人々を、暗雲の中に取り込もうとしている。その数、この数分で数千人。私は泣き叫ぶ多くの民の姿を目の当たりにして、焦りと恐怖で手が震えるのをもう片方の手で抑えようとするも、震えが収まる気配はない。


 だが、それが戦えない理由にならないのは、自分が一番よく分かっている。今、優先すべきは、力の解放に成功したルイーゼとの力の融合をさらに強固なものにするために、ルイーゼを導くことだ。


「ルイーゼ。ここに手を出して。」ようやく呼吸が整ったばかりのルイーゼに酷だと思いながらも、私は自分の「宿世石」を握り、差し出されたルイーゼの手のひらにその石を乗せ、握り締める。


「ルイーゼ。ここに意識を集中して。」ルイーゼは頷くと、目を閉じ、意識を石に集中させる。


 すると、その手からルイーゼのオーラよりもさらに赤い閃光が煌めき、辺りを全て真っ赤に照らす。その光は、人々の精神に入りこみ、私側の人間と判断した場合、その者の心の安定、怪我の治癒など全てをよき方向へと導く手助けとなるのだが、敵と判断した場合、目はもちろん、長時間照らされることで精神崩壊を誘発し、その者を負の方向へ導く力がある。


 民の拉致に集中していたロイだったが、私とルイーゼの発したその光にまず目をやられ、徐々に精神が不安に飲み込まれる恐怖から絶叫し始め、術を解かざるを得ない状況に陥った。


「なんていう光だ…。光に…光にこの身が滅ぼされる…。アレクシア、撤収だ。」女の方も、ロイより早くその場に倒れており、何とか体を起こして撤収の言葉を呟き始める。


 私たちが発した光に、この世の終わりを見たような表情の2人は黒雲とともに消えていった。


 全ての力を使い果たした私とルイーゼは、意識を失い、そのままその場に倒れこむ。


「莉羽!ルイーゼ!」叫ぶ凱が私を、ルイーゼは巨人先生が抱え、直ちに王宮内の医務室に連れて行く。王宮専属医師と医術師たちが、万全の体制で治癒を行う。


 私たちの回復を待つ間、能力者たちは私とルイーゼの力の融合による能力解放について話し始めた。


「お2人の力は想像以上だった。私も名だたる能力者の力をこの目で見てきたが、ここまでの力は初めて見たぞ。これならば、敵がどんな力を持っていようと、戦えるんじゃないのか?」


「ああ、そうだな。我々の力とはレベルが違う。」


「しかし、まだ力が解放されたばかりとなると、それを操れるようになるまでに、力が暴走しないことを祈るだけだな。」


「ああ。暴走したら、この辺の町や村の一つなんて軽く吹っ飛ぶだろう。」


「だがしかし…、いったいどれだけの人が連れ去られただろう…。」巨人先生が呟くと皆、下を向き黙り込む。すると男たちの後ろから、


「この星の人の力を侮らないで。危機に直面した時、潜在能力が解放されるって、ここにいる2人が教えてくれたじゃない。きっと連れ去られた人たちも、何かしらの行動を起こしているに違いないわ。」小さな女性が声を上げる。


「そっ、そうですよね…。ただでは済まさないはずですよね…。ファータの民だもの。」聞いていた他の能力者が言う。


「しかし、本当にこの2人の力は予想をはるかに超えていましたよ。凱様はこのお2人の力は想定していたんですか?」巨人先生が聞く。


「ある程度は…。でも…、まだ伸びるでしょうね。」凱は私に回復魔法をかけながら話す。初めて見る魔法の様子を不思議そうに見る能力者たちは、凱の真似をしてみては首を横に振っている。


「莉羽様の力はおそらく最終ステージ直前まで上がってますね。ルイーゼさんとの力の融合が何段階もの能力の解放を促進したようです。」


「ルイーゼさんは、初めに自分の力で第1ステージまで解放させ、その後、莉羽様との融合で第4ステージまでは上げたんじゃないでしょうか。」


「いや、もっと上かもしれません。」


「このまま実戦を重ねれば、完全なる解放を迎える日は近いですね。」


「そうなればとてつもない戦力になる。皆さんもう少し協力してください。」凱は頭を下げる。


皆、笑顔で、

「もちろんですとも。」


凱はみんなの笑顔の向こうに、こちらの様子を見ている女の姿を確認する。凱の視線に気づいたその女は闇の中に消えていった。



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