【第3夜④ ~統治能力と異能力~】
その後、私はシュバリエで起きている状況を、国王に報告する。それから、全ての星が協力し合わなければ、この一連の事件を起こしていると思われる、もう1人の「神」に勝つことはできないと伝え、ファータの異能者の協力を要請した。
父である王は、これに快く応じ、その次の日には、ファータ全土にその旨が伝えられた。それから5日ほどでそれぞれの国で部隊が編成され、通達から1週間ほどで各国の部隊が王都に続々と入ってきた。
王都に入ってくる何万という兵士を見ながら王が、
「しかし、姫はわが娘でありながら、ここ最近、私の全く知らない人格も持ち合わせているように思えて…。とても不思議な感じだな。」自慢のひげを撫でながら話す。
「そうですね。私もあなたの娘として今まで生きてきましたが、このような状況になった今、甘えるだけではいけないと考えております。ですので、なんとも不思議な気持ちです。でも、これからです。私は強くなります。見ててください、お父様。」
私がやる気に満ち溢れた顔でそう言うと、それとは正反対に少し不安そうな顔をして、
「大変な戦いになるだろう…。死なないでくれよ。わが娘。」
父の目に涙が浮かんでいるのに気づく。そして父は凱の手を取り、
「娘を頼むぞ。」と言って頭を下げ、握る手にさらに力が入る。
※※※
王がこの場を離れたことを確認してから、
「それにしても、今回の件で国王の方針とか、政策とか、在り方にも違いがあるなって思った。統治の観点から見ると、これまでの功績からファータ王は素晴らしいものがあるのだろうけれど、今回の件に関しては、自分から前に出ないよね。世代交代って気を遣ってくれてるのかもしれないけれど…。皇子も連れ去られた今、私なんかよりも自分が出たほうがって思っちゃう。それに比べて、シュバリエ王は、自分で積極的に対話を取って、自分が中心にならなきゃって感じが強くて、頼りになる王って感じがする。」私がこの間感じていた事を話し始める。
「まあ、確かに…。世代交代もあるかもしれないけど、単純に最強って言われてるお前の方が、今の状況では民が望むものに近いと考えているのかもしれないな。言われてるとおり、政治的力のあるファータ王と、最強の異能の力を持つお前。この状況ならお前の方が民を安心させることが出来るだろう?
シュバリエ王に関しては…、まあ、お前がシュバリエ王のあのビジュアルからしてお気に入りなのは分かってるから目を輝かせて話すのも…。」ここまで言うと、凱は何かに気付いたのか話を止める。
「何?」私は小声で聞く。
「いや、いま何か気配を感じたから…。」凱は神経を研ぎ澄ます。
するとノックの音が聞こえ、ヴァランティーヌが扉の向こうで食事の用意が出来たと知らせに来る。
「なんだ、ヴァランティーヌか。焦って損したね。」そう言って、食事に向かう。




