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【第6夜④ ~新しい仲間~】

 その後すぐに王宮に戻り、鉱石採掘場の件についての報告を、国王に済ませたロイとフィンが、未知の敵との次なる戦いに向け準備を進める騎士団の詰所に戻ってくる。

「一通りの報告は済んだ。魔物が横行し、〈石〉の盗難、人の連れ去りが続くこの状況下では、採掘場の事件に関して、部隊をそうは動かせない状況である事も王はわかっていらっしゃる。今は国民の安全の確保、警備強化と現状を把握することに全力を尽くしてほしいとの事だ。中央管轄の各部隊は、全地域の国民、石の被害状況報告を随時行うよう、周辺各部隊に伝えてほしい。あとの者は通常通り動いてくれ。以上だ。」ロイは各部の長たちに指示を出す。

「はっ。」団員が一斉に動き出す。


「それとハルトムート。国王がお前に会いたいとおっしゃっておられるので、私と来てほしい。」ロイが武器の手入れをしているハルトムートに話しかけると、

「わかった。それで…、ここにいる団員に話しておきたいことがあるんだが…、時間を作ってもらえるだろうか?」理由は分からないが、何かしらの決意を持った表情でハルトムートが皆に問うと、その様子に部屋の空気がピリッとする。ただでさえ、シュバリエの問題と思っていたものが、この星全体に関わるものである可能性も出てきたことに緊張感漂う騎士団には、ハルトムートの意味深な言葉は重いものだった。それを察知し、その緊張の糸を断ち切ろうと、

「何?そんな深刻な顔して。僕たちとっても忙しいけど…、ハルト君、君のそんな真剣な顔を見たら断るなんてできないな~。でも時間がな~。」ふざけながらフィンが言うと、ハルトムートの言葉に、何事かと身構えていた団員たちの表情に笑顔が戻る。微笑みながらロイが、フィンの肩にポンっと手を置き、2人顔を見合わせると、フィンはにんまり笑顔を作る。

「承知したハルトムート。時間は作る、約束する。」とロイが答える。ハルトムートが頷くのを確認すると、

「さっ、莉羽は僕といっしょに楽しい、楽しい訓練の時間だよ~。」フィンがいつもの小悪魔的笑みで私を見る。そんなフィンに、

「えっ?何とか車いすでの移動ができるようにはなりましたけど…、私、まだ怪我が完治してませんよ、副団長…。」と困惑の表情で言うと、

「動けない時は講義でしょ!横になりながらでもいいから!しっかりお勉強しましょうね、莉羽さん。早く騎士団の一員になりたいんだよね?」フィンは先ほどと変わらず、にやにやしている。

「まあ、そりゃそうですけど…。」私が困ってるのを見かねたアラベルが、

「莉羽と一緒にいたいからって…、こんな怪我している時まで訓練させようなんて、どうかしているよ、お兄ちゃん。」本気で怒るアラベルにフィンは、

「何言ってんだよ、アラベル。一緒にいたいなんて…、そんな事一言も言ってないだろ。」フィンはアラベルの言葉が図星だったのでテンパっている。それを呆れ顔で見ているロイと、苦笑しているマグヌスの横にいる凱は、心なしか仏頂面に見える。


「さっ、ケガ人は休養が一番!部屋に戻りましょ、莉羽。」アラベルの声に頷く私。すると、凱がすっと私の車いすの背後に来て、

「俺が押します。」アラベルはそんな凱を見て、にっこり笑うと、誰にも聞こえないような小さな声で言う。

「お兄ちゃんの恋も前途多難だわ…。」

アラベルの言葉に気付かない私を部屋まで連れて行ってくれた凱は、

「新しい情報も入って気持ちが落ち着かないと思うけど、今はゆっくり休め。治ったらまた、訓練再開だからな。」そう言うと私の額にそっと手を置いて、

「おやすみ。莉羽。」優しくほほ笑む。私は凱の優しさに安心して眠りに落ちるのだった。


 ウィルドア国王からの密命を受けてシュバリエに来たハルトムートは、シュバリエ国王に事の経緯と自分たちの今後の役割について、かなりの時間を費やし伝えたようだった。ウィルドア国王にハルトムートの人となりを事前に聞いていたこともあり、国王はその熱意に感銘を受け、ハルトムートにシュバリエでの騎士団付属の特別部隊としての活動許可と、活動に関わる援助を行うことを約束する。騎士団長ロイも、今後の戦いにおいてハルトムートの力を必要と考えていたのでそれを歓迎した。そして詰め所に戻る二人。


「みんな集まってくれ。」ロイが召集をかけるとフィン、マグヌス、アラベル、凱と私の5人が席に着く。

「先ほど、国王の命により、ハルトムートがマグヌスと同様、騎士団付属の特別部隊の隊長になることが決まった。ウィルドア国王にはすでにこの件に関する使者を送った。ハルトムートは公に、シュバリエでの活動も自由に行うことができるようになったというわけだ。」ロイが報告を終えると、フィンは腕を組み、口を尖らせながら、

「ふ~ん。そうなんだ。王の命なら、異論は…言えないじゃん。」そう言ったかと思うと片目を開け、栗毛の若者に近づき、

「そういうことなら仕方ない…、俺様がシュバリエの騎士団の作法を教えてあげよう!」にこっと笑って握手を求める。

「お兄ちゃん、そこはよろしくでいいじゃない!なんでそういう言い方しかできないの?素直に喜べばいいのに…。」アラベルはむっとした顔でフィンの背中を叩く。それを見たハルトムートはプッと吹き出し、

「ああ…、よろしく。」と口を押えながらハルトムートは握手に応える。

「でも、ウィルドアのみならず、シュバリエでも活動するということは、自国を離れる機会が増える。シュバリエに何かほかに目的があるのではないのか?」マグヌスが尋ねる。ハルトムートはうんと頷き、

「さっき、皆に時間を作ってほしいと…、話があるといったのはそれなんだ。」ハルトムートは一度咳払いをしてから、話し始める。

「俺にはこのシュバリエで果たさねばならないある目的がある。個人的なものだが、今、この星に起きている問題にそれが関わっている可能性が高いと、今回の一件でわかった。だから俺はこの決断をした。とりあえず聞いてほしい。」



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