【第3夜③ ~新たな仲間~】
【前回より】
民衆のヴォルテージは一気に上昇し、私はエルフィー皇子拉致事件で奈落の底に落とされた民衆の心を引き上げることに成功した。
「お疲れ、やったな。」
緊張で顔が少し引きつっていた私は、凱のその言葉でようやく緊張の糸を緩めることができた。そして、
「なかなか、やるでしょ!」と笑って言うと、
「見直した。シュバリエの時とは別人だな。」凱は私の頭をポンポンとして、ニヤッと笑う。すると、
【コンコン】とノックする音が聞こえ、侍女のルイーゼが入ってくる。
「あなたは…、ルイーゼ?」
「はい。エルフィー様の件で姫には大変失礼なことを…。本当に申し訳ございませんでした。」深々と頭を下げるルイーゼ。
「莉羽には、言ってなかったけど、俺がここに来るように呼んだんだ。」
「そうだったの?まさか、凱も分かっていたの?」私の言葉を遮って、凱が、
「ああ。察しの通りだ。だから、それをお前の口から伝えてほしい。」
「分かった。」私はそう言うと、一呼吸置いて、
「ルイーゼ、前回の件はもう大丈夫です。事情が事情ですし、もう時効ということにしましょう。」
私はルイーゼの犯した罪よりも、これからの彼女の力に期待をしている。というのも、このルイーゼに初めて会った時から、はっきりとは分からないが何か特別なものを感じていた。
『この子は能力者かもしれない』
思っていた事が、凱の一言で確信にかわり、それを伝えようとするとルイーゼが話し始める。
「今日ここに私が呼ばれた意味はわかりません。でも、皇子が拉致されるのをこの目で見てから、私はいてもたってもいられなくて…。お呼びいただいたことをチャンスと思い、言わせていただきます。」
「?」
「何の力もない私ですが、皇子を…、皇子を取り戻したいんです。でもどうやったらいいのかもわかりません。でも…、気持ちは誰にも負けない。だから、だから…。」ルイーゼは、今にも泣きそうな顔で話す。
「そうね、あなたの皇子への気持ちは十二分に分かっているわ。」そして私は、しめたとばかりにほほ笑みながら、
「じゃあ、私と共に挑みましょう。エルフィー皇子を取り戻す、この戦いに。」
手を取る私。
驚くルイーゼ。
「戦い…、ですか?」ルイーゼは訳が分からないままだ。私はそんな彼女の手を握り、
「エルフィー皇子を連れ去った敵と戦いましょう、という意味。」私はウィンクしながら言う。
「え?私がですか?」
「ええ、そうよ。」にこっと笑う。すると、心を決めたかのようにルイーゼは、
「姫。私は信じます。今日のあの民衆の前での演説…、感動しました。慈愛に溢れた言葉…、あの場にいた者、全ての心を揺さぶりました。私もその内の1人です。莉羽様についていきたいです!よろしくお願いします。」そう返したルイーゼの目には微塵のかけらもなかった。
「言っておくけど、甘くないわよ。死戦を越える…、その覚悟、あなたにはある?」
「はっ、はい。もちろんです。皇子のためならこの命…。」
「ダメダメ。死んじゃったら…。皇子に会えないでしょ?だから、「死ぬ気」で、であって、皇子のためなら死んでも…、なんてダメ。そんな気持ちならついてこないでね。」
私が笑って言うと、ルイーゼも笑顔で応える。
「はっ、はい。」
「でね。思うのだけど…、あなたはさっき、自分には力がないって言ったけど、実際に能力を試したことはないんでしょう?」
「はい。」
「この星の民は皆、何かしら力を持っているもの。実は私もまだ本当の能力に目覚めていないの。だから、一緒に頑張ってみない?皇子を助けるために…、ね!」
「そんな…、とんでもない非礼を犯したこの私が、そんなお言葉をいただいてよろしいのでしょうか…。」
「もちろんよ!」私は晴れやかに言う。
「はい!心から嬉しいです。ありがとうございます!」ルイーゼは嬉しそうに答える。
「ということで、凱。助けてね。」私は笑いながら凱の肩をたたく。
「ああ。言われるまでもない。それが俺の使命だからな。」凱は私の顔を見て話した後、
「ルイーゼ。君はあの件以来、王宮から出て生活していると聞いた。でもこれからは王宮内に部屋を用意するのでそこで生活してほしい。」
「私に何が出来るかわかりませんが、出来る限りの事をしていきたいと思います。姫、凱様、よろしくお願いします。」
「うん、よろしくね!」




