【第1夜㉝ ~王から告げられる驚愕の事実①~】
王宮の中庭の茂みの中で、突然凱に抱きしめられた私。
何事?とドキドキする間もなく、すぐに体を離され、王の間まで連行のごとく手を引かれ連れられる私…。
私たちが王の間に入りしばらくすると、シュバリエ国王ジョセフⅢ世が側近と思われる女性と共に、神妙な面持ちで入ってくる。無言で玉座に座り、私たちの顔を見渡すと、何かに気づいたのか、はっとして立ち上がり、階段をゆっくりと降りて私の目の前まで来ると話し始める。皆、王のその行動に違和感を覚えながら、王の話に耳を傾ける。
「此度はそなた達に辛い思いをさせ、申し訳なかった。心から詫びる。申し訳なかった…。」国王は深々と頭を下げる。私たちは、一国の王たるものが頭を下げるなど想像すらしていなかったので顔を見合わせる。王はその間も頭を下げ続け、それからゆっくりと頭を上げる。
「なぜこのような事態に陥ってしまったか、私の口から説明させてほしい。」そう言って、確認するかのように私たちの顔を見回す。フィンが黙って頷くと、王も少し安心したのか、表情を緩め話し始める。
「私にとってロイは…、心から信頼できる従者だった。あれほど責任感の強いロイが消えたと聞いて…、以前彼が話していたことを思い出した。
この先近い将来、この国に災いをもたらす赤目の少女が現れる。私がもし王の前から消える事があったらそれを思い出してほしい、それはその者の所業だと。
私はロイの家族が虐殺されたこと、そしてマグヌスが殺害された事を知り、騎士団の中に赤目の少女が入団したと耳にして…、それがそなたの事だと考えた。
だが、ロイの家族の件を調査した結果、その間そなた達の動きに何ら疑う余地はなく、関与した可能性がないことを確認し、むしろ、ロイの動きに不審な点が多いとの報告を受けた…。
その結論に達するまでにかなりの時間を要し、そなた達に不要な負担を強いることになってしまった。」
その王の言葉に、驚愕の事実を知らされたシュバリエ騎士団の面々。一気に表情が青ざめ、アラベルは気を失い、倒れそうになったところをマグヌスに支えられる。
「どうしたのだ?」王が騎士団の異変に問いかける。フィンは、唇を噛みながら、
「なんでもありません。大丈夫です。」そう気丈に話す目に、あふれる涙を何とか堪えているのが見て取れる。それから、王の言葉を一つ一つ理解し、しばし考えていたフィンが口を開く。
「王、私たちは確かに大変な思いをしました。死んだ仲間もいます。流れた血を考えると…、言葉がありません。しかし、その仲間たちを思うなら…、私たちはこれからこの国で起きようとしている災いを、食い止めることを考えていかねばならぬと思うのです。ですから、もし王のお気持ちの中で私たちへの疑念が払拭されているのであるならば、私たちに対する絶対的信頼と全面的な支援をいただきたいと考えております。そうしていただくことが…、死んでいった者たちへのせめてもの手向けになります。」フィンは王に対しても毅然とした態度をとる。
確かに今回の国王の命で、私たちはたくさんの危機に面してきた。何も知らなかったとはいえ、国王に忠誠を誓っている私たちに弁明の機会を与えてくれなかった事実を考えると、フィンのとった言動は納得がいく。皆同じ気持ちだった。
フィンは続ける。
「そして、ここで聞いていただきたい話があります。この星の今後を左右するかもしれない重要なことです。」
そう言うと私に前に出るよう促す。
「ロイの話にあった赤目の少女、それがこの莉羽です。莉羽には、この星域を護り、平和へと導かんとする神の言葉を聞く力があります。どうぞお見知りおきください。」そう言って、フィンはそれ以降、この星域が危機にさらされている状況、それを守るために動く私たちの使命など全ての事を伝える。王は最初、信じられないというような表情で聞いていたが、フィンが話を終えると、
「まさか…という話だが、信じないわけにはいくまい。」王の理解があまりに早い事に驚く私たちに、王は衝撃的な一言を発する。




