【第1夜㉚ ~胸を張れ!~】
フィンの招集で集まった団員たちの話題は未確認の情報で溢れていた。
「国王が俺たち騎士団に招集命令を出したらしい。」
「騎士団再結成か?」
「招集して皆殺しかもしれん。」
「散々反逆者扱いしておきながら、今更何だっていうんだ。」
憶測での話は尽きることはなかった。そんな団員たちの不安や不満が今にも爆発しそうな状況を、フィンが収める。
「明朝、日の出とともに王宮に戻る。それまで各自、帰還の準備を進めてくれ。それぞれ思うところはあるだろう。しかしここで我々は国王に対し、自分たちの正当性を胸を張って説く。何も恥じることも、後ろめたいこともない。大丈夫、こちらには、神遣士である莉羽と、バートラルの凱がいるんだ。それに覚醒した…、俺を信じてくれ。」フィンが誇らしげに話すその姿は、団員たちに誇りと自信を蘇らせ、士気の上がった団員たちはあちこちで声を上げる。
「団長の言う通りだ。」
「そうだ。我々に非はない。」
「我々は誇り高き騎士団だ。」
「おお~。」
「王宮に戻るぞ!」
フィンの号令と共にそれまで不平不満をぶちまけていた団員たちは、一斉に動き出きだす。
※※※
そんなフィンと団員の様子を頼もしく感じながら見ていた私たちだったが、あることに気付く。
「莉奈は…、どこに行ったの?」私の言葉に凱はハッとして、辺りを探し回る。
「さっきまで俺の後ろにいたんだが…。」私たちは顔を見合わせ、急に不安が押し寄せてくるのを感じる。
「拉致された?それとも…、何かの力で消えた?それとも…自発的に?」考えたくもない推測が頭をよぎる中、私たちは帰還の準備を始めながら、莉奈の行方を探す。




